最低賃金を7月から3.75%引き上げ
(オーストラリア)
シドニー発
2024年06月19日
オーストラリアの労使裁定機関フェアワーク委員会(FWC)は6月3日、2024/2025年度(2024年7月~2025年6月)の全国最低賃金を7月1日から、時給24.10オーストラリア・ドル(約2,506円、豪ドル、1豪ドル=約104円)、週給915.90ドルに引き上げると発表した。時給ベースでは、現在の23.23豪ドル(2023年7月~2024年6月)から3.75%引き上げられる。引き上げ率は前年度の8.7%(2023年6月30日記事参照)より抑制された。
FWCは今回の決定の要因について、インフレ率は前回(2023年6月)と比較して低下したものの(2024年5月10日記事参照)、特に低所得世帯の生活費負担を考慮したとしている。FWCはまた、職業別に定められた労使裁定(アワード、注)における2024/2025年度の最低賃金も、全国最低賃金と同様に3.75%引き上げるとした。FWCは3.75%の引き上げ率について、連邦政府の2024年度予算案やオーストラリア準備銀行(RBA)の賃金上昇率予測に沿って決定しているため、2025年の消費者物価指数(CPI)上昇率が3%を下回るとする政府予測と整合性が取れていると表明、インフレ抑制を目指す政府の方針と一致する水準となった。
発表を受けて、ジム・チャルマーズ財務相は6月3日、今回の決定は労働者にとって勝利だと高く評価した。「国民は賃金が力強く持続的に上昇することを望んでおり、生活費負担への圧迫に対する問題解決の一助となる」と述べた。一方、財界団体オーストラリア産業グループ(Aiグループ)は、比較的緩やかな引上げではあるが、依然として企業にとっては高いコストとなり、雇用調整圧力にさらされると懸念を示した(6月3日付プレスリリース)。また、低賃金の従業員にとっても失業や不完全雇用のリスクにさらされるだろう、とした。Aiグループは、オーストラリアの労働生産性が伸びていない(注2)ことを指摘し、(企業にとっては)実質賃金の上昇は生産性の向上と連動して初めて持続可能になると認識している、と述べた。
(注1)フェアワーク委員会(FWC)が特定の業界や職種ごとに労働条件を定めたもので、賃金や労働時間、各種手当などが規定されている。
(注2)連邦政府の生産性委員会の発表によると、2023年の1年間で労働生産性は0.4%低下した。
(青島春枝、山崎美樹)
(オーストラリア)
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