最低賃金を7月から8.7%引き上げ

(オーストラリア)

シドニー発

2023年06月30日

オーストラリアの労使裁定機関フェアワーク委員会(FWC)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは6月2日、2023/2024年度(2023年7月~2024年6月)の全国最低賃金を7月1日から時給23.23オーストラリア・ドル(約2,230円、豪ドル、1豪ドル=約96円)、週給882.80ドルに引き上げると発表した。時給ベースでは、現在の21.38ドル(2022年7月~2023年6月)から8.7%引き上げられる。

FWCは今回の決定の背景について、現在のインフレ率(2023年5月8日記事参照)が特に低賃金の従業員の生活に与える影響に重点を置きつつ、堅調な労働市場などを考慮し検討したと説明した。FWCはまた、職業別に定められた労使裁定(アワード、注)の2023/2024年度の最低賃金も5.75%引き上げるとした。

今回の引き上げを受けて、ジム・チャルマーズ財務相は6月2日、「オーストラリアの低賃金労働者にとって大きな勝利だ」と歓迎した。一方、財界団体のオーストラリア産業グループ(Aiグループ)は同日、「今回の引き上げ決定には失望したが、決定を判断する上で、生活費高騰対策と経済低迷下での引き上げによる企業経営への負の影響にも配慮するといった、相反する事項を考慮する難しさは経営者として理解している」と一定の理解を示した。しかし、「経済や労働市場があらゆるプレッシャーを受け、生産性が低迷している中で、(最低賃金の引き上げは)インフレ加速のリスクを増大させる決断だ」との懸念を示した。

(注)フェアワーク委員会(FWC)が特定の業界や職種ごとに労働条件を定めたもので、賃金や労働時間、各種手当などが規定されている。

(青島春枝)

(オーストラリア)

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