米ニューヨーク州知事、マンハッタン中心部通行料徴収プログラム導入の無期限の一時中止を発表
(米国)
ニューヨーク発
2024年06月10日
米国ニューヨーク(NY)州のキャシー・ホークル知事(民主党)は6月5日、NY州の都市交通局(MTA)に対し、労働階級と中流家庭の市民にさらなる負担をかけるのを避けるため、通行料徴収プログラム(congestion pricing)の導入を無期限で一時中止するよう指示したと発表した。
この通行料徴収プログラムは、NY市マンハッタン区の60丁目以南の中心部(CBD)に入る乗用車に最低15ドルの基本料金を課すもので、2023年12月6日にMTAの委員会が賛成多数で可決し(2023年12月12日記事参照)、6月30日から適用する予定だった。
ホークル知事は今回の決定の背景について「私はNY市民が直面している経済的な負担を理解している。NY市民は過去5年間で、食料品だけでも平均23%の値上がりに直面した」「住宅価格は17%上昇した」と発言した。
また、通行料徴収プログラムの目的は「市内の排気ガス削減」と「公共交通機関に必要な設備投資のための財源確保」だったが、これは新型コロナウイルスが流行する前、まだ労働者が週5日オフィスに出社していて観光業が過去最高を記録していた5年前に制定されたもので、状況は変わったと述べた(注)。また「慎重に検討した結果、計画している通行料徴収プログラムを現時点で実施すれば、NY市民にとって、あまりにも多くの望ましくない結果を招くことになるという決断に至った」とも発言した。
ホークル知事はまた「電車線路の補修、新しい信号機の設置、地下鉄などへのエレベーターの増設」など、「信頼性と利便性への早急な投資」を含め、「NY市民に約束した全ての改善案を進めることに全力を尽くす」とし、「全ての住民の生活の質を向上させるため、NY市とのパートナーシップを規範に、他の方法で市の渋滞解消に取り組んでいく」と述べた。
当初から反対表明をしていたNY州に隣接しているニュージャージー州のジョッシュ・ゴットハイマー連邦下院議員(民主党)は同日、自身のウェブサイトで、ホークル知事の決断を称賛する声明文を発表した。
(注)通行料徴収プログラムの根拠法自体は2019年にNY州議会で可決されていた。
(吉田奈津絵)
(米国)
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