米NY州首都圏交通局、マンハッタン中心部の通行料徴収プログラムを賛成多数で可決
(米国)
ニューヨーク発
2023年12月12日
米国ニューヨーク(NY)州の首都圏交通局(MTA)の委員会は12月6日、NY市マンハッタン区の60丁目以南の中心部(CBD)に入る乗用車に対し、最低15ドルの基本料金を課す、通行料徴収プログラム(congestion pricing)を賛成多数で可決した。
このCBD通行料徴収プログラムに関する報告書は、4月12日から30日間公開されていた(2023年5月17日記事参照)。キャシー・ホークルNY州知事(民主党)は6月7日、連邦道路局(FHWA)が30日間の最終環境アセスメント公開期間を経て、同プログラムの環境審査を完了したと発表。同プログラムを導入する方向で進めるとしていた。
MTAの交通モビリティ検討委員会(TMRB)はその後、NY市内の3つの区をつなぐ橋とトンネルを管理するMTAのトライボロー・ブリッジ・アンド・トンネル・オーソリティ(TBTA)委員会に対し、通行料徴収金額を提案。3回にわたる公開会議後の11月30日、TMRBは、TBTA委員会が料金設定を検討し推奨事項を定めるために必要となる情報を含めた報告書を作成し、公開した。
具体的な推奨内容は以下のとおりとなっている。
(1) 乗用車と乗用車タイプの商用ナンバーの車がCBDに入る際、1日1回を上限として、15ドルを課すべきである、(2)トラックはサイズによって、24~36ドルを課すべきである、(3)オートバイは乗用車の半額を課すべきである、(4)各通行料は、CBDに入る際のみ徴収されるべきである、(5)通行料は、最も渋滞する平日午前5時~午後9時、週末午前9時~午後9時までの通行を対象に徴収し、夜間は75%引きにすべきである、(6)低所得者(注)としてTBTAに登録する乗用車所有者に対しては毎月、平日10回の利用以降、通行料を半額にすべきである。
ホークル知事は12月6日、MTAの委員会がCBD通行料徴収プログラムを可決したことを受け、「渋滞緩和のための料金設定は、よりクリーンな空気、より良い交通機関、そしてNY市の道路の渋滞緩和を意味する。MTA委員会による本日の判断は、重要な前進だ」とした。また、「本日承認された案は、当初検討されていた最高料金から35%近く引き下げるべきという私の呼びかけに答えたものだ」とした。
隣接州であるニュージャージー(NJ)州のジョシュ・ゴットハイマー下院議員(民主党)は今回のMTAによる可決を受け同日、自身のX(旧ツイッター)で、2024年にはジョージワシントン橋の通行料に加え、CBD通行料も上昇することを含めると、NJ州の住民がマンハッタンに車で通勤したり、病院や食事に行ったりする場合、通行料だけで40ドルかかる恐れがあるという内容を投稿した。
ゴットハイマー下院議員は当初から、フィル・マーフィーNJ州知事(民主党)やボブ・メンデズ上院議員(民主党)とともに、CBD通行料徴収プログラムは、車両をNY市内のブロンクス区や、NJ州北部のバーゲン区などに迂回させ、それらの地域における交通量、汚染物質が増加するとして、反対する姿勢を示していた。
(注)この報告書で、低所得者は世帯年収5万ドル以下となっている。
(吉田奈津絵)
(米国)
ビジネス短信 19854010d85eeb6d