米ジョージア州知事、異議申し立てなどに係る新選挙法案に署名、2024年大統領選で適用

(米国)

アトランタ発

2024年05月14日

米国ジョージア州のブライアン・ケンプ知事(共和党)は5月6日、同州公示法典(OCGA)の選挙に関連する部分を改正する法案(SB189)に署名外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、同法は成立した。

2020年の大統領選挙後、共和党の勢力が強い州を中心に、投票権を制限する効果を持つ法案が可決されており、ジョージア州でも2021年に、投票者の身分証明要件をより厳しく課すなど、選挙関連の法律が制定された(2022年1月26日付地域・分析レポート参照)。今回は2021年以降で、同州の選挙に関する法律の最も大規模な改正となる(「アトランタ・ジャーナル・コンスティチューション」紙電子版5月6日)。

同法により、OCGAの21-2-172条の「大会による大統領選挙人、政治団体の候補者の指名」で、大統領選挙で20以上の州または地域で投票権を得た政党または政治団体は、同州でも候補者を擁立し、総選挙の投票権を得ることができると追記した。同法成立前までは、政治団体の候補者または無所属の候補者が同州で大統領選挙に立候補するには、7,500人以上の同州の登録有権者から署名を得る必要があった。同法により、ロバード・ケネディ・ジュニア氏のような無所属の候補者が同州で立候補しやすくなり、民主党候補のジョー・バイデン大統領の票が割れる可能性が指摘されている(APニュース5月7日)。

また、OCGAの21-2-230条の「他の有権者による有権者名簿記載者に対する異議申し立て、手続き、聴聞、上訴の権利」には、異議申し立ての「正当な理由」の例(注1)が記載されたほか、投票から45日以内の異議申し立ては、その投票の認証が完了するまで延期されると追記された。2020年の大統領選挙をきっかけに、同州では何万件もの有権者資格の異議申し立てが提出され、2021年の選挙関連の州法改正で、1人の有権者が無制限に異議を申し立てることができるようになったことで、2022年の中間選挙中、一部の郡で異議申し立てが殺到した経緯がある(CNN5月7日)。一方で、連邦法では、州と郡は連邦の選挙後90日以内に有権者名簿を組織的に変更することはできないと定めており、この条項は同法反対派からの訴訟の一因となっている(NBCニュース5月7日)。

上記の修正事項は7月1日から有効となるため、11月の大統領選挙でも適用される。

ジョージア州は「スイングステートPDFファイル(642KB)」の1つに挙げられ、勝利政党が変動しやすい激戦州と言われている。2020年の大統領選挙では、バイデン大統領が1万1,779票、得票率で0.23ポイントの僅差で共和党のドナルド・トランプ前大統領に勝利し、トランプ前大統領は同州での選挙不正を主張していた(2022年5月26日記事参照)。4月に同州で実施されたエマーソン大学の世論調査外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注2)では、共和党候補のトランプ前大統領の支持率(47%)がバイデン大統領(44%)を3ポイント上回った。一方で、同州の前副知事で共和党のジェフ・ダンカン氏がバイデン大統領支持を表明したことから、バイデン氏は不満を持つ共和党員を自身の陣営に迎え入れていると発言し、巻き返しを図っている(2024年5月9日記事参照)。

ジェトロの特集ページ「2024年米国大統領選挙に向けての動き」では、大統領選挙に関する最新動向を随時紹介している。

(注1)有権者が死亡していることや、役所などの政府の情報源のみから得られる一般に入手可能な情報源によって確認または記載されている非住所に登録されていることなどが挙げられている。米国郵政公社(USPS)が管理する全国住所変更データベースのデータのみでは、異議申し立ての証拠として不十分とされている。

(注2)実施時期は4月25~29日、対象者はジョージア州の登録有権者1,000人。

(檀野浩規)

(米国)

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