スエズ運河の通航船舶数が約3分の1に

(エジプト、イエメン)

カイロ発

2024年05月17日

エジプトの主要な外貨収入源であるスエズ運河の通航船舶数が、紅海におけるイエメンのフーシ派の商船攻撃の影響で、2024年5月初めの1週間は前年同期の約3分の1にまで落ち込んだ。

IMFと英国オックスフォード大学が共同で開発したポートウォッチ(2024年2月19日記事参照)によると、5月1日から7日までの1週間、スエズ運河を通航したタンカーと貨物船の合計は、1日当たり平均で30.3隻と、前年同期の81.1隻から62.7%減少した。

減少幅は月を追うごとに拡大している。2023年1月と2024年1月を比較すると、1日当たり平均は71.3隻から45.4隻へと36.4%減、2月は69.6隻から38.6隻へと44.5%減、3月は72.1隻から34.2隻へと52.6%減、4月は77.9隻から35.4隻へと54.6%減だった。新型コロナ禍によるサプライチェーン混乱で通航量が落ち込んだ2020年6月でも1日平均は47.0隻だった。

通航料金は船舶と積荷の種類、スエズ運河庁独自の控除基準が反映されたスエズ運河トン数(SCNT)などに応じて算出され、通航船舶数が少なければその分、通航料収入も減る。

エジプト中央銀行(CBE)によると、2023/2024会計年度上半期(2023年7月~2023年12月)の通航料収入は48億ドルと好調だったことから、­­­フーシ派による商船攻撃がなければ、年間ベースで過去最高の収入が期待されていた。

CBEによると、2022/2023会計年度(2022年7月~2023年6月)の供給側実質GDP成長率3.6%のうち、観光業の寄与度が0.7ポイント、卸売・小売業が0.6ポイント、スエズ運河通航料収入が0.3ポイントを占めていたことから、通航料収入の減少幅が大きければGDP成長率の減速要因になる。アラブ首長国連邦(UAE)によるエジプト北西部ラス・アルヘクマへの対内直接投資案件(2024年2月27日記事参照)やIMFの支援拡大(2024年4月5日記事参照)の効果により、外貨準備高は2024年2月末の353億1,000万ドルから4月末に410億6,000万ドルにまで増加したが、これにもブレーキがかかる可能性がある。

スエズ運河庁は、2024年1月15日からタンカー、コンテナ船などの通航料金を15%値上げし、ばら積み船とRORO船(注)も5%値上げしたが、この値上げはフーシ派が紅海で商船への攻撃を始めた2023年11月より前の2023年10月16日に発表されていた。

商船は喜望峰へ迂回しており、ポートウォッチによると、喜望峰を通過するタンカーと貨物船の2024年4月の1日当たり平均通航船舶数は81.9隻と、前年同月の45.2隻から81.2%増加した。

(注)RORO船:貨物を積んだトラックやシャーシ(荷台)ごと輸送する船舶。

(西澤成世)

(エジプト、イエメン)

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