国会議長が辞任、最高指導部の一角がまたも失脚

(ベトナム)

ハノイ発

2024年05月13日

ベトナム国会は5月2日、第15期(2021~2026年期)第7回臨時国会を招集し、ブオン・ディン・フエ国会議長の解任を可決した。4月26日に、ベトナム共産党臨時中央委員会総会で、国会議長、政治局員、中央委員(注)、国防安全保障評議会委員を辞任するというフエ氏の申請に合意がなされていた。国会では、人事手続き上の決議がとられた。フエ氏は、党員としての規定と党幹部としての模範を示す責任について定めた規定に違反した、と報じられており、事実上の更迭とみられる。

国会議長は、「四柱」と呼ばれるベトナム共産党最高指導者(書記長、国家主席、首相、国会議長)の一角をなす要職で、党の序列4位に当たる。2024年3月には、当時、国家主席だったボー・バン・トゥオン氏が、フエ氏と同じく党の規則違反を理由に辞任しており(2024年3月25日記事参照)、「四柱」が相次いで辞任する異例の事態となった。

フエ氏の具体的な違反内容は明らかにされていないが、大手インフラ建設企業トゥアン・アングループによる贈収賄事件との関係を指摘する声がある。4月22日にはフエ氏の補佐、5月4日にはズオン・バン・タイ・バクザン省党委員会書記が、本事件に関連する職権乱用の疑いで逮捕されている。

臨時国会の終了後、第15期国会常任委員会は、次の国会議長が決まるまでの間、チャン・タイン・マン国会副議長が国会議長の職務を代行し、国会常務委員会と国会の活動を管理することを発表した。

フエ氏は4月に中国を公式訪問し、習近平国家主席と会談するなど、精力的に外交活動をしている矢先の辞任となった。

ロイターは、グエン・フー・チョン書記長の主導する反汚職運動による混乱が、政治的安定というベトナムの投資環境の魅力に影響を及ぼす可能性を指摘している(ロイター通信4月26日)。

(注)政治局はベトナム共産党の意思決定機関で、中央委員会は指導機関。

(萩原遼太朗)

(ベトナム)

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