国家主席が就任1年で異例の辞任、相次ぐ指導部の失脚

(ベトナム)

ハノイ発

2024年03月25日

ベトナム国会は、第15期(2021~2026年期)第6回臨時国会を3月21日に招集し、ボー・バン・トゥオン国家主席の解任を可決した。前日の20日に、ベトナム共産党臨時中央委員会総会で、国家主席、政治局員、中央委員(注)、国防安全保障評議会議長を辞任するというトゥオン氏の申請に合意がなされていた。国会では、人事手続き上の決議がとられた。

トゥオン氏は2023年3月に、ベトナム社会主義共和国に改称された1976年以降、最年少の52歳(当時)で国家主席に就任していた(2023年3月10日記事参照)。多数の政府高官らが汚職に関わった不祥事の責任を取って辞任したとされる前任のグエン・スアン・フック氏に続き、国家主席が1年余りで交代する異例の事態となった。

トゥオン氏の辞任理由は、党員としての規定と党幹部としての模範を示す責任について定めた規定に違反したため、と報じられている(VNエクスプレス3月20日)。具体的な違反内容は明らかにされていないが、現地報道によると、不動産開発を行うフックソングループの不正会計事件との関連を指摘する声もある。3月21日の臨時国会では、同グループが絡んだ収賄の容疑に問われているホアン・ティ・トゥイ・ラン・ビンフック省党委員会書記ら国会議員の罷免も可決されている。また、3月8日には、トゥオン氏が中部クアンガイ省党委員会書記だった2011~2014年に、同省人民委員長を務めていたカオ・コア氏らが同グループに関連する収賄容疑で逮捕されている。

臨時国会の終了後、第15期国会常任委員会は、ボー・ティ・アイン・スアン国家副主席を暫定の国家主席代行に任命することを発表した。

トゥオン氏の辞任をめぐり、ロイターは、共産党最高指導者グエン・フー・チョン書記長の主導する反汚職運動が権力闘争に利用されている、と報じている(ロイター通信3月20日)。今後、トゥオン氏後任の人選が進むと見られるが、チョン書記長の側近と目されていたトゥオン氏の失脚は、79歳であるチョン書記長の後継者選びなどにも影響がおよぶとみられる。

(注)政治局、中央委員会はそれぞれ、ベトナム共産党の意思決定機関、指導機関として組織されている。

(萩原遼太朗)

(ベトナム)

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