バイデン、トランプ両氏が6月に討論会実施で合意、米大統領選挙
(米国)
ニューヨーク発
2024年05月16日
ジョー・バイデン米国大統領とドナルド・トランプ前大統領は5月15日、11月の大統領選挙に向け、6月27日と9月10日にテレビ局主催の討論会に参加することで合意した。米主要メディアが一斉に報じた。6月の討論会はCNNが、9月はABCが主催する。
大統領選挙に向けた候補者による討論会は、1988年以降、大統領討論委員会(CPD)が主催してきた。CPDは今回の大統領選挙においても、大統領候補者による1回目の討論会を9月16日にテキサス州で、2回目を10月1日にバージニア州で、3回目を10月9日にユタ州で、副大統領候補者による討論会を9月25日にペンシルベニア州で行うと、2023年11月に発表していた。
他方で、バイデン、トランプ両陣営は、CPDによる討論会を批判していた。バイデン陣営のジェン・オマリー・ディロン選対本部長は「莫大(ばくだい)な費用をかけ、大勢の聴衆を集めて巨大な見世物を作るというCPDのモデルは、単に良い討論会には必要ないし、それに資するものでもない」と述べていた。また、過去の討論会は、参加者にルールの順守を徹底できていなかったとして、各候補者の発表の順番の間だけマイクを有効にするといった提案をしていた(「ワシントン・ポスト」紙電子版5月15日)。トランプ陣営も、CPDが主催する討論会は、いくつかの州で期日前投票が始まった後に行われるなど、公平ではないと批判していた(注1)。
大統領候補者による討論会の時期が想定より早くなったことで、選挙結果への影響を指摘する報道もみられる。バイデン氏、トランプ氏とも、予備選挙では早々に党からの候補者指名獲得を確実にしたが(2024年3月14日記事参照)、一定の抗議票もみられている(2024年4月25日記事、2024年5月16日記事参照)。こうした点から、今回の大統領選挙では、第3の候補にどれだけ票が流れるかが争点の1つとされている。
6月に討論会が行われると、バイデン氏とトランプ氏の露出が増えるため、CNN(5月15日)は、両氏ともに第3の候補者による影響を軽減できるかもしれない、と報じている。また、6月のCNN主催の討論会は、トランプ氏のニューヨークでの刑事裁判が結審した直後になる予定だ。バイデン氏とトランプ氏の支持率は拮抗(きっこう)しているが、最近の世論調査(注2)では、トランプ氏がニューヨークの裁判で有罪になるべきと48%が回答しており、裁判後にトランプ氏がどのような発言をするのか、この観点からも6月の討論会は注目される。
また、政策面での議論が深まるかも注目される。通商面では、バイデン氏が中国に対する追加関税の見直し結果を発表した際、全ての国からの輸入に対して一律10%の関税賦課を示唆しているトランプ氏を暗に批判した(2024年5月15日記事参照)。討論会では主要候補者がこうしたテーマを直接議論するため、2025年以降の政策方針が示されるかが注目される。
CNNによる6月の討論会は、アトランタで行われる。司会など詳細は追って発表がある予定だ。副大統領候補による討論会は、共和党全国大会後の7月下旬に行うことが提案されている。なお、CPD主催の討論会には、バイデン、トランプ両陣営ともに参加を拒否する意向を示しているとされる。
ジェトロの特集ページ「2024年米国大統領選挙に向けての動き」では、大統領選挙に関する最新動向を随時紹介している。
(注1)CPDは、各州の期日前投票の規則を総合的に調査した結果、1回目の討論会の日付を9月16日に選んだとし、何百万人もの米国人が投票を済ませた後でないと討論会は始まらないとする指摘は当てはまらない、と反論している。
(注2)経済誌「エコノミスト」と調査会社ユーガブの世論調査。実施時期は2024年5月12~14日。対象者は全米の成人1,830人。
(赤平大寿)
(米国)
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