習国家主席がマクロン大統領と会談、農産品、航空宇宙、AIなどで協力

(中国、フランス、パレスチナ、イスラエル、ウクライナ)

北京発

2024年05月15日

中国の習近平国家主席は5月6日、フランスのパリでエマニュエル・マクロン大統領と会談を行った(注1)。

習国家主席は、2024年に国交樹立60周年を迎えた両国の歩みを評価し、双方は独立自主を堅持し、ともに「新冷戦」や陣営対立を防ぐべきだとした。その上で、平等で秩序ある世界の多極化を推進し、デカップリングに反対すべきだとした。

その他、中国はフランスとの間で戦略的意思疎通を維持し、相互に核心的利益を尊重し、戦略的安定性を確かなものにすることを希望するとした。フランスからの農産品やハイテク・高付加価値製品の輸入拡大を希望するとともに、フランスを含む12カ国に対するビザ免除を2025年末まで延長するとした(注2)。

中国外交部によると、マクロン大統領は、両国は先端技術分野だけでなく、気候変動対策や、海洋多様性などのグローバルな課題に対しても成果をあげてきたと評価した。また、フランスは中国企業に対して、差別的な政策はとらず、ハイテクを含む多くの分野の投資を歓迎するとした。

習国家主席は会談後の記者会見で今回の会談での決定として、(1)両国関係の戦略的安定を強固なものとする、(2)互恵協⼒の広⼤な潜在⼒を発掘する、(3)人的・文化的交流を促進する、(4)グローバルな協⼒に向けたコンセンサスを構築するという4点を挙げた。

(1)では、マクロン大統領の訪中を歓迎するとした。(2)では、農産品・食品、金融分野での協力を推進し、航空宇宙、民生用原子力での共同研究開発とイノベーションを推進し、グリーンエネルギー、スマート製造、人工知能(AI)、第三国市場などでの協力を促進するとした。

パレスチナでの軍事衝突については、全面的かつ持続的な停戦を呼びかけるとともに、「二国家解決」(注3)の再開を支持するとした。ウクライナ問題では、これを利用して第三国に罪を着せたり、誹謗(ひぼう)したり、「新冷戦」を先導したりすることに反対するとした。その上で、中国は均衡し効果のある、持続可能な欧州の安全保障枠組み構築を支援するとした。

訪問期間中に両国は中東問題やAIなどに関する4つの共同声明と、デジタルや航空分野など18の協力協議などを締結した(添付資料表参照)。

5月7日付の「環球時報」は、両国関係の安定と発展は、西側諸国が中国の対外政策や、制度や文化的背景が異なる国との関係発展に際しての原則を理解するのに役立つだろうと評した。

(注1)国家主席としての習氏のフランス訪問は2014年、2019年に続いて3度目となる。両首脳は5月7日にフランス南部オート・ピレネー県でも小規模会談を実施しており、中国外交部によると、「和やかな雰囲気の中で、幾つかの重要な問題について、戦略的な意思疎通をした」とされる。5月8日付の「中国新聞網」は、オート・ピレネー県はマクロン大統領の「第二の故郷」とし、「これほど私的な場所への招待は、他の海外の指導者に対しては見られない特別な待遇だ」と、異例の厚遇であることを強調した。

(注2)中国はフランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、マレーシア、スイス、アイルランド、ハンガリー、オーストリア、ベルギー、ルクセンブルクに対して、15日間のビザ免除を実施している(2023年11月29日記事2024年3月8日記事参照)。

(注3)イスラエルとともに共存共栄するパレスチナ国家を建設すること。中国のパレスチナでの軍事衝突に関する方針は2023年12月1日記事参照

(河野円洋)

(中国、フランス、パレスチナ、イスラエル、ウクライナ)

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