岸田首相が米議会で演説、日本の対米投資の大きさを強調

(日本、米国)

ニューヨーク発

2024年04月12日

岸田文雄首相は4月11日、米国連邦議会上下両院合同会議で演説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを行った。日本の首相による米国議会での演説は、2015年4月の安倍晋三首相以来約9年ぶり。

岸田首相は、世界が歴史の転換点を迎えていると指摘し、「米国が何世代にもわたり築いてきた国際秩序は今、新たな挑戦に直面している。そしてそれは、私たちとは全く異なる価値観や原則を持つ主体からの挑戦だ」と述べた。具体的には、「現在の中国の対外的な姿勢や軍事動向は、日本の平和と安全だけでなく、国際社会全体の平和と安定にとっても、これまでにない最大の戦略的な挑戦をもたらしている」と述べ、日米共通の課題の1つだと提起した。こうした課題に対して、「ほぼ独力で国際秩序を維持してきた米国。そこで孤独感や疲弊を感じている米国の国民のみなさまに、私は語りかけたい」として、「世界は米国のリーダーシップを当てにしているが、米国は、助けもなく、たった1人で、国際秩序を守ることを強いられる理由はない」「米国は独りではない。日本は米国とともにある」と述べた。また、前日の日米首脳会談(2024年4月11日記事参照)と同じく、日本は米国のグローバルパートナーであると強調した。また岸田首相は、国家安全保障戦略の改定や、防衛予算の増額、ロシアに対する制裁、ウクライナ経済復興推進会議の開催(2024年3月1日記事参照)などの実績を例示し、日本の防衛・安全保障面での前進とリーダーシップを強調した。

さらに、日米両国に加えて、韓国、オーストラリア、インド、フィリピン、ASEANなどとさまざまな協力関係が生まれていると指摘した。その上で、「同志国とともに、『自由で開かれたインド太平洋』の実現を目指している」と述べ、「こうした努力に対し、ここ米国連邦議会では、超党派の強力な支持がいただけるのではないか」と訴えた。

経済に関しては、「日本は世界最大の対米直接投資国だ。日本企業は、約8,000億ドルを投資し、米国内で約100万人の雇用を創出している」と述べ、日系企業の対米投資の大きさを強調した。さらに、「成長志向の日本経済は、米国へのさらなる投資にもまた拍車をかけることだろう」と述べ、今後の経済関係拡大への期待を述べた。両国間で拡大する協力分野として、人工知能(AI)、量子、半導体、バイオ技術、クリーンエネルギーなどの重要・新興技術や、宇宙分野を例示した。

なお、岸田首相の演説に先立って、上下両院外交委員会の超党派の議員から、岸田首相の訪米を歓迎し、日米同盟の重要性を強調する決議案(上院決議案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます下院決議案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)が共同提出されている。2024年11月には大統領選挙と合わせて、議会でも上下両院(注)で選挙が行われる。2025年以降の米国の政策の行方を占うためには、議会選挙の趨勢(すうせい)にも関心を払う必要がある中、議会から超党派で日米関係を重要視する姿勢があらためて示された。

(注)上院(任期6年、100議席)、下院(任期2年、435議席)のうち、上院は34議席、下院は全435議席が改選される。詳細はジェトロ「米国大統領選の仕組み~連邦議会選挙の重要性PDFファイル(266KB)」を参照。なお、改選に際して複数の現職主要議員が引退を表明している(2024年3月25日記事参照)。

(葛西泰介)

(日本、米国)

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