非市場経済的慣行を引き続き問題視、米USTR2024年外国貿易障壁報告書(中国編)

(米国、中国)

ニューヨーク発

2024年04月02日

米国通商代表部(USTR)は3月29日に公表した2024年版「外国貿易障壁報告書(NTE)」PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)2024年4月2日記事参照)の中で、中国に関して、前年(2023年4月5日記事参照)と同様にNTEで設定した分野(注)に加え、貿易協定と国家主導の非市場的貿易体制も取り上げた。全体のページ数が削減される中、中国に関する記述は国・地域別で最も多い44ページが充てられ、前年の41ページから増加した。

2023年に続いて冒頭に記載された貿易協定に関して、USTRは、米中経済・貿易協定(いわゆる第1段階の合意、2020年2月21日記事参照)について、中国は合意を十分に順守しておらず、同協定が中国の国家主導の非市場的貿易体制の根本的な変化につながっていないとし、前年と同様の認識を示した。

また、中国の国家主導の非市場的アプローチが中国の産業政策を形成し続け、中国企業に不公正な競争上の優位性をもたらしていると指摘した。中国は先進製造業や高度な技術を要する産業などに重点を置き、非市場的手段によってのみ達成可能な生産量と市場シェアに関する目標を設定しているとも記載した。米国は経済安全保障の観点から、先端技術などのサプライチェーンで、米政府が指定する懸念国からの依存を軽減するサプライチェーンの強靭(きょうじん)化を目指しており、近年特に問題視している。

貿易の技術的障壁(TBT)と衛生植物検疫(SPS)措置でも、前年のNTEで触れた「中国輸入食品海外製造企業登録管理規定」(2021年5月24日記事参照)と「中国輸出入食品安全管理弁法」(2021年5月24日記事参照)を引き続き問題視した。2023年7月から中国輸入食品海外製造企業登録管理規定に基づいて新たに施行された特定製品に対する追加登録要件について、「規制当局の従来の役割を根本的に超えている」として、初回登録の要件を満たすことができない米国の新規食品メーカーにとって、既に貿易の混乱を生じさせていると記載した。

デジタル貿易については、データローカライゼーションが、政府によって国民を監視し、労働者の権利を妨害し、市民的・政治的自由を損なうために利用される可能性があることを認識しているとした上で、中国のデータ政策に課題があるとした。具体的には、中国で「データ域外移転安全評価弁法」(2022年7月12日記事参照)が施行された結果、データ輸出を希望する企業からの申請が数千件も滞留していることが報告されているとした。また、2023年9月に発表された「データ越境流通を規範化・促進する規定」は、2週間のパブリックコメント期間しか認められていなかったとも指摘した(2023年10月3日記事参照)。

(注)輸入政策、貿易の技術的障壁(TBT)、衛生植物検疫(SPS)措置、政府調達、知的財産保護、サービス分野の障壁、デジタル貿易に対する障壁、投資障壁、補助金、非競争的慣行、国有企業、労働、環境、その他の障壁。

(赤平大寿)

(米国、中国)

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