福井県企業による工芸品と食品の海外販路開拓取り組み事例を紹介

(福井、世界)

福井発

2024年04月04日

ジェトロは326日、小浜市、小浜商工会議所、福井県などとの共催により、福井県小浜市で海外販路開拓に向けた福井県内企業の取り組み実践例を紹介するセミナーを開催した。

前半は、ジェトロが海外展開支援事業・サービスを説明し、「地域貢献プロジェクト」(注1)を通じた越前漆器協同組合による台湾への販路開拓支援事業を紹介した。支援開始当時、輸出実績はほぼゼロだったが、4年間の支援事業を通じて、組合が自主的に海外展示会に出展するようになった。その結果、組合加盟企業の海外販路開拓に対する意欲が高まり、成約実績が生まれていると強調した。

セミナー後半には、パネルディスカッションが行われ、越前和紙メーカーのやなせ和紙(越前市)とシーフードレストランを運営するアカネ実業(福井市)がパネリストとして登壇した。

写真 パネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)

パネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)

やなせ和紙代表取締役の栁瀬晴夫氏は、海外販路開拓に取り組むきっかけと現状を披露した。主力商品だった襖(ふすま)紙の国内需要が減少し、新たな分野の市場開拓に迫られていた際に、伝統工芸品製造技術とデザイナーをマッチングし海外展開可能な商品作りを支援する一般社団法人伝統的工芸品産業振興協会主催のプロジェクトに参加した。その結果、小物入れなどに活用できる「和紙の箱外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を開発したという。取引関係のある北海道の家具メーカーが米国ニューヨークの見本市出展の際にディスプレーとして「和紙の箱」を展示したところ、ブースを訪れた現地企業の目に留まり、購入につながったのが、最初の海外販売実績だ。その後、コロナ禍になり、取引が途絶えた中、知り合いからジェトロの紹介を受け、「TAKUMI NEXT」事業(注2)に参加した。同事業でのメンタリングやオンライン商談によって輸出実績が生まれているほか、「JETRO EC Academy for US Market」という米国市場開拓に向けたオンライン勉強会を通じて、輸出に関して情報や悩みを共有できる仲間ができたことが大きいと述べた。

写真 やなせ和紙が開発した和紙の箱(やなせ和紙提供)

やなせ和紙が開発した和紙の箱(やなせ和紙提供)

アカネ実業は「新規輸出1万者支援プログラム」の参加企業だ。北陸新幹線の福井・敦賀延伸をきっかけとした新商品開発において「オイスターソース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」作りに注力した。ジェトロの海外コーディネーター(農林水産・食品分野)や北陸農政局にシンガポールのマーケット情報や現地の消費者が好む香りづけなどに関するアドバイスをもらい、海外向けの商品作りに没頭してきた。同社代表取締役社長の大坂幸太郎氏は「輸出実績はまだ出ていないが、商品開発を通じて、従業員のモチベーションが向上するといった成果が生まれている」と強調した。

写真 アカネ実業が開発したオイスターソース(アカネ実業提供)

アカネ実業が開発したオイスターソース(アカネ実業提供)

(注1)中小企業の海外販路開拓・拡大を目的とし、海外バイヤーとの商談や商談成果を高めるための地域単位での取り組みを支援する事業。

(注2)日本各地域の技術や生活文化の特色を生かした魅力ある商材の海外展開を希望する中小企業・小規模事業者を対象に、専門家によるメンタリングやオンラインでの商談、SNSによる広報・PRを通じて、海外販路開拓を支援する事業。

(齋藤寛)

(福井、世界)

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