米アマゾン、生成AI企業のアンスロピックに計40億ドルの出資完了、アマゾン史上最大規模のベンチャー投資

(米国)

ニューヨーク発

2024年04月04日

米国アマゾンは3月27日、生成人工知能(AI)の開発を手がける米国スタートアップのアンスロピックに27億5,000万ドルを追加出資したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

両社は2023年9月に戦略的提携を結び、アマゾンは初期投資の12億5,000万ドルと合わせてアンスロピックに最大40億ドルを投じると発表していた(2023年10月3日記事参照)。今回の追加出資により、アマゾンのアンスロピックへの出資額は計40億ドルに達し、投資計画は完了したことになる。これらの一連の出資は、アマゾンにとって過去最大規模のベンチャー投資となった(「ファイナンシャル・タイムズ」紙2024年3月27日)。

今回の発表は、(1)アンスロピックの最新AIチャットボットの「クロード3(注1)」が3月13日から「アマゾン・ベッドロック(注2)」内で使用可能になったこと、(2)アマゾンウェブサービス(AWS)がアンスロピックの主要なクラウドサービスプロバイダーとなること、(3)アンスロピックがアマゾンの独自開発した半導体チップを使用し、より高性能で安全な生成AIの開発を構築することなど、提携によるこれまでの成果を総括するものとなっている。なお、アマゾンは今回の出資後も少数株主にとどまるもようで、アンスロピックはグーグルを含めた複数の企業から資金を調達していくほか、引き続きグーグルのクラウドサービスの使用も続ける見込みだ(「ファイナンシャル・タイムズ」紙2024年3月27日)。米国連邦取引委員会(FTC)が2024年1月、AI開発者とクラウドサービス事業者間の投資や提携が競争環境にもたらす影響について調査を開始する中(2024年1月29日記事参照)、アマゾンのアンスロピックへの投資がどう判断されるか注目される。

今回のような大手クラウドサービス事業者からAIスタートアップへの投資事例は増加しており、これに伴ってAIスタートアップの評価額も大幅に上昇している。アンスロピックの評価額もわずか1年以内で3倍の150億ドル以上(2024年2月時点)に達し(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版2024年3月27日)、オープンAIの評価額は290億ドル以上(CNBC2024年3月27日)と報じられている。アマゾンやマイクロソフト、メタを含めた大手7社(注3)によるAI領域への投資総額は、2022年の44億ドルから2023年には246億ドルと、約5.6倍に急増した。他方、こうしたAIスタートアップへの巨額な投資について、大企業が自社のクラウドサービス事業に現金を還流させ、収益として回収するという循環契約になっているとの批判もある(CNBC2024年3月27日)。

(注1)アンスロピックが2024年3月に公表した最新AIモデル。同社によると、大学レベルの知識、大学院レベルの推論、基礎的な数学などの分野における業界指標のテストでは、競合のオープンAIの「GPT-4」やグーグルの「ジェミ二・ウルトラ(Gemini Ultra)」を上回ったとしている。

(注2)AWS上で生成AIを活用したアプリケーションを構築するツール。

(注3)アマゾン、マイクロソフト、アップル、エヌビディア、アルファベット、メタ、テスラの7社。

(樫葉さくら)

(米国)

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