米アマゾン、生成AI企業のアンスロピックに最大40億ドル出資

(米国)

ニューヨーク発

2023年10月03日

米国アマゾンは9月25日、生成人工知能(AI)の開発を手がける米国スタートアップのアンスロピックに最大で40億ドルを出資する戦略的提携を結ぶと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。アマゾンは今回の出資により、アンスロピックの少数株主となる。

発表によると、アンスロピックは同社の主要なクラウドサービスのプロバイダーとして「アマゾンウェブサービス(AWS)」を採用し、研究や基盤モデルの開発などにAWSを活用することで、より高性能で安全な生成AIの開発を目指すとしている。また、アンスロピックはアマゾンが独自開発した半導体チップを使用し、AWSのクラウド上で将来の基盤モデルの開発トレーニング、デプロイ(注1)を行うとしている。生成AIの開発・運営には高性能のグラフィックプロセッサー(GPU)が必要とされ、これまで最先端のAIアプリケーションには半導体大手エヌビディア製の高価な半導体チップが多く使われてきたことから、今回の提携はアマゾンの半導体チップ製造にとって大きな前進になるとみられる(ブルームバーグ9月25日)。そのほか、アマゾンの開発者やエンジニアは「アマゾン・ベッドロック」(注2)を通じてアンスロピックの基盤モデルを活用することで、既存のAIアプリケーションを強化し、アマゾンのビジネス全体で新たな顧客体験を提供できるようになるという。

アマゾンが多額の出資をするアンスロピックは、対話型AIの「ChatGPT」などを手掛けるオープンAIで研究部門のバイスプレジデントを務めていたダリオ・アモデイ氏らによって2021年に設立された。同社のAIチャットボットの「クロード」はChatGPTと似た機能を持つが、同社では「憲法AI(Constitutional AI)」と呼ばれる独自のAIトレーニング技術を採用することで、安全で信頼性の高いAI技術の構築を目標に掲げている(2023年5月30日記事参照)。

近年の生成AI関連の投資には、マイクロソフトが2023年1月にオープンAIに100億ドル、グーグルが2023年5月にアンスロピックに3億ドル以上、セールスフォースによるアンスロピックやオープンAIの競合のコーヒアへの出資などが挙げられる。大手テック企業による新興企業への出資の動きが広まり、今後の開発を巡る競争の激しさが増している(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版6月25日)。

(注1)開発したアプリケーションを実際の運用環境に配置・展開して使用可能な状態にすること。

(注2)AWS上で生成AIを活用したアプリケーションを構築するツール。

(樫葉さくら)

(米国)

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