EU、域内の国境越えた企業活動の行政手続きを軽減するデジタル会社法改正案で政治合意

(EU)

ブリュッセル発

2024年03月22日

EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会は3月13日、EU会社法におけるデジタル化を進める改正指令案に関して、暫定的な政治合意に達したと発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。EUでは新たな規制に伴う行政手続きの増加が問題視されており、改正指令案は、デジタル化により行政手続きの負担軽減を目指す取り組みの1つだ。また、企業情報へのアクセスの改善や透明性を確保する狙いもある。改正指令案は、2023年3月に欧州委員会が提案したもので(2023年4月6日記事参照)、今後、両機関の正式な採択を経て施行される見込み。

政治合意は、欧州委案を維持しつつ、一部の行政手続きを簡略化している。まず、改正指令案は、デジタル化され、EUの全公用語に対応して、加盟国を問わず利用できる「EU会社証明書(EU company certificate)」と「EU委任状(EU power of attorney)」を導入する。政治合意では、加盟国法がNACEコード(経済活動の分類コード)の使用を認めている場合は、EU会社証明書にNACEコードを使用して企業の事業目的を記載するとしたほか、EU共通の標準的なひな型となるEU委任状の内容も明確化した。これらを活用することで、別の加盟国で使用する際にアポスティーユ(公印確認)や認証翻訳の取得が不要となる。また、事業組合などの特定の事業形態の場合、デジタル版のEU会社証明書は原則、無償で発行される。

このほか、改正指令案は、既存の事業者登録相互接続システム(Business Registers Interconnection System:BRIS)を活用することで、EUレベルでより正確な企業情報をより多く利用可能にするとともに、各加盟国の事業者登録間でやりとり可能な情報を拡大する。これにより、「再回答不要の原則(once-only principle)」の適用が可能となり、別の加盟国での子会社などの設立の際に、BRISに登録済みの情報は現地当局への再提出が不要になる。また、有限責任事業組合に関しても、当該情報が加盟国の事業者登録において利用可能な場合、BRISを通じた情報開示が可能になる。

(吉沼啓介)

(EU)

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