欧州委、域内の国境越えた企業活動を容易にするデジタル会社法の改正案を発表

(EU)

ブリュッセル発

2023年04月06日

欧州委員会は3月29日、企業のデジタル化への対応を拡大すべくEU会社法の改正指令案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。デジタルの活用により、加盟国間の国境を越えた企業活動における行政手続きを軽減するとともに、企業の透明性のより高い水準での確保を目指す。EUにおける会社法は、加盟国法とともに、一部の分野に関して域内共通の最低基準を導入すべくEU法が制定されている。デジタル化に関しては、会社設立などの手続きのオンライン化を導入するEU法が既に施行しており、今回の指令案はデジタル化対応に向けた法整備の第2弾となる。指令案は今後、EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会で審議される。

指令案によると、行政手続きの軽減に関してはまず、加盟国間の国境を越えた企業活動において、「再回答不要の原則(once-only principle)」を適用する。既存の事業者登録相互接続システム(Business Registers Interconnection System:BRIS)を活用することで、企業が別の加盟国において子会社や支店を設立する際に、BRISに登録済みの情報の現地当局への再提出を不要にする。また、企業の基本情報を含む「EU会社証明書(EU Company Certificate)」をEUの全公用語で発行することで、他の加盟国における公共調達への入札や税務手続きなどの円滑化を図る。さらに、加盟国が発行する登記情報に関する書類や公正証書に関しても、別の加盟国で使用する際に必要となるアポスティーユ(公印確認)や認証翻訳の取得を不要にする。このほか、デジタル委任状に関するEUレベルの標準的なひな型の利用も可能にする。

透明性の向上に関しては、BRISを活用することで、共同事業者や事業の主要な所在地などのより多くの重要な企業情報をEUレベルで一般に公開する。また、BRISだけでなく、実質的支配者や債務超過などに関するEUの相互登録制度と合わせて、企業情報の検索を容易にする。このほか、企業情報の登録前の確認や企業情報の適時の更新を確保することで、企業情報の信頼性を向上させる。

(吉沼啓介)

(EU)

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