米USTRのタイ代表、第13回WTO閣僚会議閉幕を受け声明発表

(米国)

ニューヨーク発

2024年03月06日

米国通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表は3月3日、第13回WTO閣僚会議(MC13)が3月2日に閉幕(2024年3月5日記事参照)したことを受け、声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

声明では、まず紛争解決制度改革に触れ、「多大な作業を称賛する」と述べ、この1年間で「これまでの数十年間で達成した以上の成果をもたらした」とその進展を強調した。続いて、電子的送信に対する関税不賦課の延長、および知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)の非違反・状態申し立ての一時停止期間(モラトリアム)の延長(注1)で合意したと紹介した。また、MC13会期中に正式に承認された東ティモールとコモロのWTO加盟(2024年2月29日記事参照)を歓迎した。加えて、加盟国の後発開発途上国(LDC)からの卒業、それに伴う貿易の技術的障害(TBT)および衛生植物検疫措置(SPS)に関する協定への適応支援などをしていくとした(注2)。

一方で、漁業や農業で合意に至らなかった点に失望しているとも述べた。特に米国は、漁業補助金が資源の乱獲に加えて強制労働にもつながっていると問題視しており、米国の連邦下院議員らはMC13の開催前に、漁業補助金を効果的に規律できる厳しい交渉を行うよう米政府に要請していた(2024年2月22日記事参照)。

なお米国は、紛争解決制度改革における進展を強調したが、同制度は、米国による新委員の選任拒否によって機能停止に陥っている(2023年8月29日付地域・分析レポート参照、注3)。またMC13において、多くの加盟国が、上級委員会が機能していない空白期間に上訴すべきではないとの約束を求めたことに対し、米国などが反発した、と批判されている(通商専門誌「インサイドUSトレード」2024年3月1日)。

(注1)GATT23条では、WTO協定に違反していない場合でも、他の加盟国が何らかの措置を適用した結果として、またはそのほかの何らかの状態が存在する結果として、協定に基づく自国の利益が侵害などされている場合に、WTOの紛争解決手続きに申し立てることを認めている。

(注2)LDCに対しては、TBTやSPSの適用が免除される措置がある。

(注3)WTOの紛争解決制度は、紛争解決小委員会(パネル)と上級委員会の二審制となっている。米国は、1962年通商拡大法232条に基づく鉄鋼・アルミニウム製品輸入への追加関税措置を「戦時その他の国際関係の緊急時」としていたが、2022年にパネルがそれを認定しないと判断したことや、WTO協定上は先例拘束性を有しないにもかかわらず、上級委員会の判断が事実上の先例となり協定解釈を拡大していること、などを問題視している。

(赤平大寿)

(米国)

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