米主要港、1月の小売業者向け輸入コンテナ量は前月比4.7%増、紅海情勢による物流への影響は沈静化

(米国、日本、イスラエル、イエメン)

ニューヨーク発

2024年03月13日

全米小売業協会(NRF)と物流コンサルタント会社のハケット・アソシエイツが発表した「グローバル・ポート・トラッカー報告」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(3月8日)によると、1月の米国小売業者向けの主要輸入港(注)の輸入コンテナ量は前月比4.7%増、前年同月比で8.6%増の196万TEU(1TEUは20フィートコンテナ換算、添付資料図参照)となり、NRFが2月時点で予測した181万TEUを大きく上回った(2024年2月14日記事参照)。紅海の物流の状況は依然として不安定だが、小売各社は航路の変更などで適宜対応しており、2024年前半の輸入コンテナ量は前年同期比で増加すると見込んでいる。

今回の発表の中で、NRFのサプライチェーン・税関担当バイスプレジデントのジョナサン・ゴールド氏は、紅海における物流の現状について「貨物のルートは変更され、商品は必要な場所に到着しており、継続的な課題にもかかわらず、消費者の需要に間に合っている。小売業者はコストや出荷遅延の影響を受けているが、消費者への影響を最小限に抑える努力をしている」とコメントした。

また、ハケット・アソシエイツ創設者のベン・ハケット氏によると、「海運業者は紅海を避けるようになり、当初報告されていた運賃の高騰や遅延は収まりつつある。小売業者と輸送業者は、航路の変更と新しいスケジュールに適応しており、新たなコストが発生しているが、紅海を航行する必要がなく、またスエズ運河の通航料を支払う必要がないため、部分的に相殺できる。輸送費の上昇によるインフレの懸念はもう緩和されているはずだ」との見方を示した。

IMFが発表した、人工衛星からの情報を基に船舶データを提供する「ポートウオッチ」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、2024年1~2月におけるスエズ運河を通過した貿易量は前年同期比で50%減少した一方、南アフリカ共和国の喜望峰を通過した貿易量は前年同期比で74%上回ったとした。多くの船舶は航路変更を余儀なくされている一方で、一部の貨物船は今もなお紅海周辺を通航している。そうした中、イエメンの武装組織フーシ派がイエメン沖のアデン湾を通航中の貨物船を攻撃し、乗組員3人が死亡する事態が発生した(2024年3月8日記事参照)。こうした状況を受け、国際運輸労連(ITF)は3月8日、国際海事使用者委員会(IMEC)の共同交渉グループとの緊急会合を呼びかけ、紅海は安全ではないとの認識と全ての航行を一時停止する措置を求める予定だと発表した。

なお、NRFは今後の見通しについて、2月は前年同月比22.7%増の190万TEU、3月は8.8%増の177万TEU、4月は3.1%増の184万TEUになると見込んでいる。その後、5月には0.5%増の194万TEU、6月は5.7%増の194万TEU、7月は3.8%増の199万TEUと、上半期のいずれも2月時点の伸び率の予測から上方修正されており、前年同月比での増加傾向は続くとしている。

(注)主要輸入港は、米国西海岸のロサンゼルス/ロングビーチ、オークランド、シアトルおよびタコマ、東海岸のニューヨーク/ニュージャージー、バージニア、チャールストン、サバンナ、エバーグレーズ、マイアミおよびジャクソンビル、メキシコ湾岸のヒューストンの各港を指す。

(樫葉さくら)

(米国、日本、イスラエル、イエメン)

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