英政府組織GBN、日立保有の土地取得、原子力開発に向けた今後の利活用に注目

(英国、日本)

ロンドン発

2024年03月25日

英国政府は3月7日、英国の原子力産業を支援する政府組織「グレート・ブリティッシュ・ニュークリア(GBN)」が日立製作所から、同社が保有するウェールズ北西部アングルシー島ウィルバ・ニューウィッドと、イングランド南西部オールドベリーの土地を取得したことを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。「民生用原子力ロードマップ」(2024年1月18日記事参照)に基づき、今後の原子力開発に利用される予定だ。取得金額は約1億6,000万ポンド(約307億2,000万円、1ポンド=約192円)。

日立製作所は過去に英国での原子力発電所建設を計画。英原子力発電事業会社「ホライズン・ニュークリア・パワー」の買収により双方の土地を取得していたが、2020年9月に投資環境の厳しさなどを背景に撤退を決定した。同社はその後も同地の保有を継続していた。

今後の原子力拡大には人材確保も課題の1つ

英国の原子力拡大に向けた課題の1つは人材確保だ。新規原子力発電所の建設が停滞していたことも影響して、建設関係者を含め、原子力関連人材の確保が難しくなっている。実例として、2024年1月にフランスのエネルギー大手EDFの英国子会社EDFエナジーがヒンクリーポイントC原子力発電所の建設完了予定の後ろ倒しを発表。同社は高コスト化に加え、人材難も理由の1つに挙げた。

人材難は建設や運営のみならず、廃炉を含めた原子力産業全体の課題となっている。1995年に運用開始したサイズウェルB原子力発電所以降、ヒンクリーポイントC原子力発電所の承認、建設開始に至るまで、英国では新規原子力発電所の開発事例がなかった。既存のプラントが今後相次いで廃炉を迎えるため、原子力発電の出力減という課題ともに、廃炉対応向けの人材確保も必要となる。現地専門家によると、小型モジュール炉(SMR)などの検討も今後進み、原子力産業のビジネス機会の創出が考えられるものの、目下、人材難は顕在化しているとのこと。対策としての後継者育成の重要性を指摘。大学進学前の層へのアプローチに加え、小学校低学年程度の早期からいわゆるSTEM教育を重点化することが必要とした。また、そうした教育における英国外の優秀な人材の活用の可能性も挙げた。

SMRの技術セレクションは入札段階へ

政府は併せて、SMRの技術選定プロセスに関し、技術開発契約への入札開始を発表。2023年10月、入札資格を有する企業として、GE日立ニュークリア・エナジーやロールス・ロイスなど6社を選定していた。政府は2024年後半に最終選定を行い、2029年までに2つのSMRプロジェクトを最終投資決定につなげるとしている。

(菅野真)

(英国、日本)

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