英政府、民生用原子力ロードマップ策定、大規模原子力発電所の新設可能性にも言及

(英国)

ロンドン発

2024年01月18日

英国政府は1月11日、民生用原子力ロードマップPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(英国政府プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同計画に基づき、電気料金を削減し、原子力関連の雇用を支えるとともに、エネルギー安全保障を強化する。大規模な原子力発電所新設の検討や、高度な原子燃料生産への投資なども盛り込んでいる。

英国は2050年までに、原子力発電容量を現在の4倍程度に相当する24ギガワット(GW)に引き上げることを目標に掲げている(2022年4月13日記事参照)。計画や建設が現在進むサイズウェルC原子力発電所やヒンクリーポイントC原子力発電所と同様の大規模な原子力発電所の新設の可能性を模索する。目標達成に向けた選択肢の確保と産業界への確実性を提供するため、ロードマップでは、2030年から2044年までの5年ごとに、3~7GW相当の新規原子力プロジェクトへの投資決定を確保することも目指す。

併せて、次世代原子炉で使用する高純度低濃縮ウラン(HALEU)の国内生産に最大3億ポンド(約558億円、1ポンド=約186円)を投資し、原子燃料の国産化を支援する。さらに、英国でのその他の先進的な原子燃料生産に必要な技術と生産施設を開発するために1,000万ポンドを提供し、国内の原子燃料の長期的な供給を確保するとともに、同盟国を支える。

政府は、新規原子力発電所の開発に関するスマートな規制を導入する計画も進める。具体的には、設計の最終決定前に規制当局がプロジェクトを評価できるようにしたり、同じ技術を評価する海外の規制当局と連携を強化したりすることなどにより、規制を含めた開発プロセスの合理化を目指す。

政府はまた、将来の原子力発電所の立地に関する新しいアプローチ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます原子力セクターの支援と高度な原子力プロジェクトを展開するための民間投資の促進外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに関する意見公募を公表した。

小型モジュール炉(SMR)に関しては、現在、英国の原子力産業を支援する政府の新組織「グレート・ブリティッシュ・ニュークリア(GBN)」主導で技術コンペティションが進められており、最終選考結果が今後発表される予定(2023年7月21日記事参照)。原子力分野のイノベーションは、家庭に電力を供給するだけでなく、産業用熱供給や水素製造のエネルギー、がんの診断や治療に用いる医療用アイソトープ技術につながる可能性があるとしている。

(菅野真)

(英国)

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