IMF、2024年の中東・北アフリカの経済成長、紅海情勢や石油減産などから下方修正

(中東、イスラエル、湾岸協力会議(GCC))

調査部中東アフリカ課

2024年02月02日

IMFは1月31日付の報告書「地域経済予測(中東・北アフリカ編)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」で、世界の経済成長率は2024年3.1%、2025年3.2%になるとの見通しを示した。なお、中東情勢などの地政学的ショックや供給の混乱によって一次産品価格が再度高騰するなど、インフレが根強く継続する場合は、各国の金融政策も引き締めトレンドが長期化する可能性があり、世界経済の下振れリスクになるとしている。

中東・北アフリカの経済成長率は、スーダンの武力衝突やリビアの洪水、モロッコの地震などのほか、イスラエルとハマスの衝突などの影響を受け、2023年は2.0%となった。2024年は2.9%へ加速する予測だが、イスラエルとハマスの衝突の長期化や、石油減産などの影響により、2023年10月時点の3.4%との予測から0.5ポイントの下方修正となった。

イエメンのフーシ派による船舶への攻撃など、紅海情勢の悪化は貿易や海運コストに影響を与える。既に複数の大手海運会社は南アフリカ共和国の喜望峰経由などの代替航路を通じて貨物を迂回させると発表しており、世界のサプライチェーンへの影響が拡大する可能性がある。IMFによると、2023年上半期に紅海と地中海を結ぶスエズ運河を経由する貿易は世界の貿易の約12%を占め、コンテナ輸送の30%、海上貨物の10~15%、液化天然ガス(LNG)輸送の8%が含まれていた。一方、1月21日時点でスエズ運河を通る10日間の累積輸送量は前年同期比50%近く減少している。さらに、欧州~中国を結ぶ輸送費は、保険料の上昇や迂回路活用によるコスト上昇により、2023年11月以降400%以上に急騰しているという。また、エジプトでのスエズ運河収入の減少や中東情勢を受けて、観光客の減少などの影響も懸念される。

OPEC加盟国や湾岸諸国(GCC)などでは、2024年末まで石油減産を継続する方針で(2023年10月5日記事参照)、GCCの経済成長率が2023年は0.5%にとどまり、2024年は2.7%との見込みだ。

なお、国連の1月4日付の報告書によると、中東(西アジア)の経済成長率は、2022年に6.5%だったが、2023年に1.7%に落ち込み、2024年2.9%、2025年3.7%と持ち直すと予測している(2024年1月9日記事参照)。

(井澤壌士)

(中東、イスラエル、湾岸協力会議(GCC))

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