日系自動車部品工場での労働権侵害は確認されず、メキシコ政府発表
(メキシコ、米国、日本)
メキシコ発
2024年02月06日
メキシコ経済省(SE)と労働社会保障省(STPS)は1月31日、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に基づいて米国通商代表部(USTR)から事実確認要請を受けていた日系企業の工場での労働権侵害に関する調査を完了、労働権侵害に当たる行為を決定づける十分な証拠は確認されなかった旨を発表した。米国政府には既に結果を通知済みとしている。
この件は、メキシコのコアウイラ州ピエドラスネグラスに所在するフジクラ・オートモーティブ・メキシコでの労働権の侵害についてで、USMCAが定める「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM)」に基づき、2023年12月14日にUSTRからメキシコ政府に事実確認要請があった(2023年12月18日記事参照)。メキシコ政府は要請を12月22日に正式に受諾し(2023年12月27日記事参照)、調査を進めていた。
調査の結果、同社工場内での労働権侵害に当たる行為は確認されなかったものの、次の措置を実施したとしている。
- 雇用主(企業)による非干渉宣言と行動指針を示す文書の発表
- 差別、ハラスメント、機会均等に関する方策の普及促進
- 企業による工場労働者への非干渉宣言と行動指針に関する研修の提供
- STPSによる工場労働者への結社の自由、団体交渉権に関する研修の提供
- STPSによる6つの工場の人事担当者への結社の自由、団体交渉権に関する研修の提供
- STPSによるコアウイラ州内の4つの工場の組合員に結社の自由、団体交渉権に関する研修の提供
今回の件解決についての判定は今後、メキシコ政府と米国政府の間で議論される。
米国は2023年1月から12月の間に12件のRRM手続きを発動しており、1月19日に発表した事実確認要請を含めると、USMCA発効以降の合計件数は19件となった。在メキシコ日系企業のうち、これまで事実確認要請対象となったのは3社。今回のフジクラ・オートモーティブ・メキシコのほか、パナソニック・オートモーティブのレイノサ工場が2022年5月に事実確認要請対象となった。調査の結果、労働権侵害があったと判断されたが、米国政府との間で救済策について合意済みだ。2023年8月には矢崎総業のレオン工場が事実確認要請対象となったが、メキシコ政府は企業側の労働権侵害を証明する十分な根拠がないと判断し、事実確認を拒否して解決済みとなっている。
(渡邊千尋)
(メキシコ、米国、日本)
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