経済省、日系企業による労働権侵害の事実確認要請を正式に受諾

(メキシコ、米国)

メキシコ発

2023年12月27日

メキシコ経済省は12月22日付でプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出し、フジクラの自動車用ワイヤーハーネス工場における労働権侵害に関する米国政府の12月14日付事実確認要請(2023年12月18日記事参照)を、正式に受諾する旨を米国通商代表部(USTR)に通知したと発表した。同社の工場は、メキシコ北東部コアウイラ州の国境都市ピエドラス・ネグラスに所在している。

同要請は、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が定める「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM/MLRR)」を活用したもので、要請された国は10日以内に事実確認を行うかどうか回答する。また、事実確認を行う場合は45日以内(2024年1月28日まで)に同結果について報告する義務がある。

今回の事実確認要請は、フジクラの同工場の労働者採用において、既にRRMに基づき2度提訴されて最終的には工場閉鎖に至ったマヌファクトゥラスVU2023年10月12日記事参照)で組合活動に従事していた元VU労働者など、特定の経歴を持つ労働者がブラックリスト化されており、組合活動の経験を理由に労働者を採用しないのは結社の自由および団体交渉権に違反するとして、メキシコの労働組合である国境労働者委員会(CFO)が米国政府に提訴したことが契機となっている。CFOのフェルナンダ・バルデス・モラレス・プロジェクト・コーディネーターによると、約80人が不当に採用されなかった(「ペリオディコ・ラ・ボス」紙2023年12月15日)とのことだが、その真偽が焦点となる。

自動車産業を中心に北東部とバヒオ地域に案件が集中

RRMに基づくこれまでの提訴案件18件を産業分野別(添付資料図1参照)にみると、自動車部品製造が13件で最多、完成車とタイヤ製造を合わせた自動車産業だと15件で全体の8割以上に及び、米国政府が優先監視分野として自動車・同部品製造業を注視していることがうかがえる。州別(添付資料図2参照)にみると、自動車産業が集積する北東部と中央高原バヒオ地域に集中している。最も案件が多いのは北東部コアウイラ州の4件、バヒオ地域のグアナファト州と北東部のタマウリパス州がそれぞれ3件、バヒオ地域のアグアスカリエンテス州、ケレタロ州、サンルイスポトシ州がそれぞれ2件と続く。資本国籍別(添付資料図3参照)にみると、米系が8件、メキシコ内資系が4件、日系が3件となっている。米系、日系が多いのは、自動車産業における両国のプレゼンスが影響しているとみられる。

提訴したメキシコの組合別(添付資料図4参照)にみると、メキシコ労働総同盟(LSOM)が5件で最多、自動車産業全国独立労働組合(SINTTIA)と全国工業サービス労働者独立組合20/32運動(SNITIS 20/32)がそれぞれ3件、メキシコ全国鉱夫・冶金・鉄鋼労働組合(SNTMMSSRM)と「組合変革(Transformación Sindical)」がそれぞれ2件で続く。これら新興労組は全国展開しているLSOMを除き、現状では特定地域を中心に活動しており、SINTTIAはバヒオ地域の主にグアナファト州、SNITISはタマウリパス州、SNTMMSSRMは鉱業が盛んな州(北部、北中部)、組合変革はケレタロ州が本拠地だ。

なお、USMCAのRRM(MLRR)に基づく提訴案件の詳細は添付資料表参照のこと。

(中畑貴雄)

(メキシコ、米国)

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