新政権下で2回目の日カンボジア官民合同会議、投資環境改善へ前進

(カンボジア、日本)

プノンペン発

2024年02月29日

第27回日本カンボジア官民合同会議(注1)が2月15日にプノンペンで開催され、カンボジア政府と日本の官民関係者がカンボジア進出日系企業の抱える課題や企業誘致に資する協力事業などについて議論を交わした。新政権下では2回目の開催となり、課題解決に向けて前向きなカンボジア政府の姿勢が示された。

会議の冒頭、スン・チャントール副首相兼カンボジア開発評議会(CDC)第1副議長は「より多くの投資を呼び込む策を検討するため、首相や関係閣僚が集まり、3時間にも及ぶ議論をした。その結果、誘致には既進出企業の課題解決が重要。特にジェトロの日系企業実態調査でカンボジアの投資環境上のリスクとして記載されている5項目(注2)への対応が必要と認識している」と発言した。その後の議論では、スン・チャントール副首相が自ら各課題について対応策案を提示した上で、「担当閣僚と調整する」と述べた。これを受け、日本側参加者からは「議論を重ねてきた課題が今後早期に進捗する可能性を感じる会議だった」との声が聞かれた。

2023年8月に開催された第26回合同会議では、カンボジア側議長のスン・チャントール副首相から、同会議で話された議題は第27回までに持ち越さないよう解決したいとの発言があった(2023年11月7日記事参照)。この間、長期に調整と交渉が繰り返された付加価値税(VAT)還付の遅延に関する議題が解決した。継続案件となったケースでも、それぞれに解決に向けた進捗が見られていた。

フン・マネット新政権が掲げる政策では、企業誘致が重点事項として位置づけられており、中でも日本企業の誘致には関心が高い。日本企業は投資後、長期的にビジネスを継続する傾向がある点や、従業員への教育を根気よく行う点などがカンボジア政府から評価されている。また、日本企業の誘致を積極的に進める背景には、米中貿易摩擦や地政学リスクへの対応が重要な課題となる中、中国からの投資依存と対米国輸出への依存を緩和したい思惑も見受けられる(注3)。

次回の合同会議は2024年8月の開催を予定している。

写真 日本カンボジア官民合同会議の様子(CDC提供)

日本カンボジア官民合同会議の様子(CDC提供)

(注1)官民合同会議は、2007年6月14日に安倍晋三首相(当時)とフン・セン首相(当時)が署名した日カンボジア投資協定の締結を受けて設置された2国間の枠組み。年に2回、カンボジアに進出した日系企業が抱える投資環境上の課題を政府に提言するもの。カンボジア側は主に政府関係者、日本側は大使館、カンボジア日本人商工会(JBAC)、国際協力機構(JICA)、ジェトロが出席。

(注2)投資環境上のリスク5項目は(1)法の未整備・不透明な運用、(2)税制・税務手続きの煩雑さ、(3)行政手続きの煩雑さ、(4)現地政府の不透明な政策運営、(5)人件費の高騰。

(注3)2023年の投資適格案件(QIP)のうち、中国からの投資案件が全体の66%を占める。貿易面では、2023年の輸出額の39.3%を米国が占める。

(春田麻里沙)

(カンボジア、日本)

ビジネス短信 c23136394433e56d