新政権下初めての日カンボジア官民合同会議を開催、投資環境整備に向けて議論

(カンボジア、日本)

プノンペン発

2023年11月07日

第26回日本カンボジア官民合同会議(注1)が10月26日にプノンペンで開催され、在カンボジア日系企業が抱える課題や、カンボジアへの企業誘致に資する協力事業などについて議論を交わした。8月に就任したフン・マネット首相率いる新政権の下での同会議の開催は初めて。日本側からは、投資環境に関する課題として、付加価値税(VAT)還付や非居住者取締役の役員報酬のみなし課税、物流システム電子化など、継続的に議論されてきたものを含め9つの課題が提示された。

新内閣人事でカンボジア側の議長となった、スン・チャントール副首相兼カンボジア開発評議会(CDC)第一副議長は、会議のなかで「フン・マネット首相も投資誘致は非常に重要と認識しており、新しい指導者の下、以前から残る問題をきれいに片づけたいと思っている。今回挙がった課題は次回会議に持ち越すことなく、期限を区切って解決していきたい」と強調した。

会議中に解決した案件はなかったが、次回会議は2024年2月に予定されており、個別案件ごとに協議が継続される予定だ。なお、日本カンボジア官民合同会議では、これまでさまざまな議題について議論が交わされてきており、その解決策が2021年10月に施行された投資法(2021年10月21日記事参照)に盛り込まれるなど、進出日系企業の課題解決およびカンボジアの投資環境整備に一定の成果を上げてきた。

スン・チャントール氏はこれまでCDC事務局長、商業相、公共事業運輸相などの要職を歴任し、2023年8月に副首相兼CDC第一副議長(注2)に就任した。また、8月から9月にかけて、経済関係省庁の大臣、長官クラスによる企業ヒアリングが頻繁に開催され、企業が抱える課題に関する情報収集と当該課題の解決策を模索する動きが出始めている。企業関係者には、このような新政権の姿勢が好機ととらえられている。

12月には、フン・マネット首相の訪日に合わせてカンボジア投資セミナーが開催される予定で、日本側としては、12月をいったんの区切りとして今回提示した課題の解決を図りたい考えだ。

写真 日本カンボジア官民合同会議の様子、右が日本側(CDC提供)

日本カンボジア官民合同会議の様子、右が日本側(CDC提供)

(注1)官民同会議は、2007年6月14日に安倍晋三首相(当時)とフン・セン首相(当時)が署名した日カンボジア投資協定の締結を受けて設置された、2国間の枠組み。年に2回、カンボジアに進出した日系企業が抱える投資環境上の課題を政府に対して提言するもの。カンボジア側は主に政府関係者、日本側は大使館、カンボジア日本人商工会(JBAC)、国際協力機構(JICA)、ジェトロが出席。

(注2)CDCの議長は首相が務めている。フン・マネット新政権下では、投資誘致を管轄する副首相が第一副議長に就任、執行体制が強化された。

(春田麻里沙)

(カンボジア、日本)

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