カザフスタン首相交代、経済政策の不首尾が原因との指摘

(カザフスタン)

タシケント発

2024年02月15日

カザフスタンで2月6日に首相が交代し、アリハン・スマイロフ氏に代わり、オルジャス・ベクテノフ氏が就任した。ベクテノフ氏は大統領府長官や汚職防止庁長官を務めてきた(2024年2月9日記事参照)。首相交代の理由について、カザフスタン政治の専門家は、前政権の経済対策が不首尾に終わったことを挙げた。また、首相交代に伴ってロシアとの関係強化の可能性を指摘した。

カザフスタンの政治学者ドシム・サトパエフ氏はメディアのインタビューで、スマイロフ氏の辞任の主な理由は、貧困層拡大に対する有効な対策を打てず、市民の不満を吸収しきれなくなったことだと述べている。ただし、行政制度が非効率なままでは、誰が首相を務めても結果は同じとの厳しい見方をしている(フォーブス・カザフスタン2月8日)。

ロシアの政治専門家の多くも、カシムジョマルト・トカエフ大統領の決定は経済政策の結果を受けたものと指摘する。ロシア高等経済学院のカザフスタン専門家ロマン・ユネマン氏は、前内閣が工業化と経済成長という目標(注1)を達成できず、ユーラシア経済連合(EAEU)加盟国の中で最も高い9.8%(2023年12月)のインフレ(注2)と、住宅・公共部門での危機管理対応の不手際を指摘した(「Lenta.ru」2月5日)。

政治学者でジャーナリストのユーリ・スベトロフ氏は前述のサトパエフ氏同様、政権交代の理由は国民の生活水準が一向に改善しないことにあると説明する(「NEWS.ru」2月5日)。同じく政治学者でジャーナリストのセルゲイ・ラティシェフ氏は、ベクテノフ新首相の主な仕事は閣僚を管理することであり、汚職を減らして既得権益構造に対抗することだと述べている(「Gazeta.ru」2月7日)。

新首相の就任がロシアにとって有利になると考える政治学者もいる。コンスタンチン・ボブロフ氏は、新政権がロシアとの関係を優先して仕事を進めることを期待し(「Gazeta.ru」2月6日)、セルゲイ・ラティシェフ氏はベクテノフ氏が欧米での留学経験がないことを根拠に、カザフスタンでの欧米諸国の影響力が今後低下するだろうとしている(「Gazeta.ru」2月7日)。

(注1)2023年のGDP成長率は5.1%と推定されているが、同年9月のトカエフ大統領の指示では、2029年までGDP成長率を毎年6~7%としている。

(注2)カザフスタンの高いインフレ率の理由として、同国大手商業銀行のホリク銀行は、a.同国経済の高い資源依存度と多様性の低さ、b.不適切な予算政策とその実施での財政規律の欠如、c.国内の競争欠如と市場メカニズムの非効率的な機能、d.金融・通貨市場の未発達を挙げている。

(ウラジミル・スタノフォフ)

(カザフスタン)

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