バイデン米政権、グローバルファウンドリーズに15億ドルの助成発表、CHIPSプラス法で3社目

(米国)

ニューヨーク発

2024年02月21日

米国のバイデン政権は2月19日、商務省とグローバルファウンドリーズ(GF)が、GFの半導体製造施設の新設、拡張、現代化のため、約15億ドルを助成する予備的覚書(PMT)に署名したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。CHIPSプラス法に基づく助成金提供の発表は、1月のマイクロチップ・テクノロジーに続いて3社目となる(2024年1月5日記事参照)。また今回の助成により、1万500以上の製造・建設関連の雇用創出を見込んでいる。

商務省の発表によると、GFによる次の3つのプロジェクトが助成の対象。

  • ニューヨーク州マルタでの、最新鋭の300ミリメートル(mm)の半導体製造。米国では現在入手できない高価値の技術を生み出すことが期待される、300mm半導体の新しく大規模な製造施設を新設する。
  • ニューヨーク州マルタでの、ゼネラルモーターズ(GM)など(2023年2月14日記事参照)、自動車向け半導体製造能力の拡張。上述の製造施設の新設と相まって、今後10年以上でマルタでの製造能力を3倍にすることが見込まれる。また、これら2つのプロジェクトが全て完了した時点で、ウエハー生産量は年間100万枚まで増加する見込み。
  • バーモント州バーリントンでの製造施設の再活性化。電気自動車(EV)、送電網、5Gおよび6Gスマートフォンなどに使用される次世代技術「窒化ガリウム(GaN)・オン・シリコン(注1)」の大量生産が可能な米国初の施設を創設することで既存の製造施設を再活性化し、200mm半導体の新技術を商業化する。また当該施設では、100%カーボンニュートラルな電力の使用や施設の年間電力量の9%にあたる太陽光発電システムの開発も行う。

また上述の助成に加え、PMTでは労働力開発に1,000万ドルの助成も提案されている。さらに、CHIPSプログラム室による、約16億ドルのGFへの融資も計画されている。一方GFは、半導体に関する実習制度の継続、NY州での既存のプロジェクト労働契約(PLA、注2)に加え、バーモント州でのPLAの締結も予定している。さらに、児童ケアサービスを、新設・拡張する製造施設で継続するだけでなく、建設労働者にも提供する(注3)。商務省の発表によると、これらのプロジェクトを合わせた官民の潜在的な投資総額は、約125億ドルになると見込まれている。

現在、GFのような規模での製造能力を有する企業は中国以外には4社しかなく、GFはその中で米国に本社を置いている唯一の企業だという。商務省は、GFの製造能力を強化し、サプライチェーンを強靭(きょうじん)化し、防衛とインテリジェンスに重要な製品を初めて米国内で生産できるようにすることで、米国の経済安全保障および国家安全保障の向上に貢献すると、今回の助成発表の意義を強調している。

商務省は今後、提案されたプロジェクトや申請書に含まれる情報について、包括的なデューディリジェンス(DD)を開始する。同省は、DDが完了した後に、申請者であるGFと最終的な助成条件が記された書類を交わすことができる。なお、申請者との交渉により、PMTに記された条件と最終的な助成条件は変わることがある。

(注1)半導体の材料である窒化ガリウムをシリコン基板上に作製する技術

(注2)PLAは、建設労働組合と建設請負業者との間で交渉される雇用前の団体協約で、建設プロジェクトの雇用条件を定めるもの。

(注3)CHIPSプラス法に基づいて、一定額以上の助成を受けるためには、児童ケアの提供も条件として課されていた(2023年3月1日記事参照)。

(赤平大寿)

(米国)

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