2023年のGDP成長率は前年比5.6%と通年目標を下回るも、政府は経済の好調を強調

(フィリピン)

マニラ発

2024年02月28日

フィリピン統計庁(PSA)は1月31日、2023年の実質GDP成長率を前年比5.6%と発表した(添付資料表参照)。第3四半期の時点で到達が難しいとされていた、政府の通年経済成長目標の6.0%~7.0%を下回る結果となった(2023年11月20日記事参照)。第4四半期(10~12月)の成長率は前年同期比5.6%だった。

2023年通年の実質GDP成長率を産業別でみると、農林水産業が前年比1.2%、鉱工業などが3.6%、サービス業が7.2%だった。製造業は外需の低迷により1.3%にとどまったが、サービス業は総じてプラスとなり、中でも商業が5.5%、金融・保険業が8.9%と高い成長率になった。建設業も8.8%だった。

需要項目別でみると、民間最終消費支出が前年比5.6%、政府最終消費支出が0.4%、国内総固定資本形成が5.4%だった。財・サービスの輸出は第4四半期にマイナスの伸びとなったが、通年では1.3%とプラスを維持した。財・サービスの輸入は1.6%だった。

政府支出のマイナスが第4四半期の成長のブレーキに

第4四半期の成長率(前年同期比5.6%)を産業別でみると、農林水産業は前年同期比1.4%(前期0.9%)、鉱工業などは3.2%(同5.6%)、サービス業は7.4%(同6.8%)と、農林水産業とサービス業においては成長率が前期を上回った。製造業は1%を割り込んだ(0.6%)が、金融・保険業が11.8%、商業が5.2%、建設業が8.5%で高い伸びとなった。

需要項目別でみると、民間最終消費支出は前年同期比5.3%(前期5.1%)、国内総固定資本形成は11.2%(同マイナス1.4%)だったのに対し、政府最終消費支出はマイナス1.8%(同6.7%)だった。一方、財・サービス輸出はマイナス2.6%(同2.6%)と、前期から一転してマイナス成長となった。サービスの輸出は2桁の伸びが続いているが、財の輸出がマイナス11.6%と大きく減少、4期連続で前年同期を下回った。財・サービスの輸入は2.9%(同マイナス1.1%)だった。

2023年の成長率は、政府目標の6.0〜7.0%には届かなかったが、アルセニオ・バリサカン国家経済開発長官は「フィリピンは依然として、アジアで最も経済が好調な国の1つだ」と強調した。同長官は、政府支出の伸びが低かったことについて、「財政赤字と政府債務を減らしつつ、社会保護のための十分な支出を確保できるような財政の健全化を目指したため」と述べた。なお、2022年の政府支出は、国政選挙と予防接種プログラムの影響で高くなっていた。また、民間最終消費支出については、「レストランやホテル、交通、レクリエーション・レジャーへの支出の増加が成長の伸びに大きく影響した」と述べた(政府通信社1月31日付)。

なお、政府は2024年のGDP成長率の目標を6.5〜7.5%に設定する見通しだ。

(西岡絵里奈、アセンシオ・アシュレイモイラ)

(フィリピン)

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