7~9月の経済成長率、前年同期比5.9%、政府目標達成には厳しい状況

(フィリピン)

マニラ発

2023年11月20日

フィリピン統計庁(PSA)は11月9日、2023年第3四半期(7~9月)の実質GDP成長率が前年同期比5.9%だったと発表した(添付資料表参照)。これまでに第3四半期のGDP成長率を発表しているベトナム、インドネシア、中国、マレーシアなどと比較すると、最も高い値だった。また、フィリピンの2023年1~9月の実質GDP成長率は5.5%となった。

産業別の成長率では、農林水産業は0.9%(前期0.2%)、鉱工業などは5.5%(同2.1%)、サービス業は6.8%(同6.1%)など、主要部門はいずれも前期と比較して上昇した。今期の成長への寄与度が高かったのは、商業(卸売り・小売り、自動車修理)、金融・保険業、建設業などだ。需要面では、民間最終消費支出が前年同期の8%から5%に減少した。国家経済開発庁(NDFA)によると、高いインフレ率に起因しているものと考えられる。

2023年第3四半期の成長率は、前期と比較すると上昇が見られた。2023年第2四半期(4~6月)は商品価格の高騰や政策金利の引き上げ、政府支出の減少や世界経済の成長の鈍化などが要因となり、4.3%の低成長率を記録していた(2023年8月21日記事参照)。前期からの回復に関して、アルセニオ・バリサカン国家経済開発長官は、政府のキャッチアップ支出計画(Catch-up spending plan)によって今期の政府最終消費支出が6.7%に増加したことを評価している。キャッチアップ支出計画に関しては、予算管理庁が8月、2023年度国家予算の支出の遅れなどから、政府機関に対して通達を発出し、各機関で予算執行を加速させて経済成長を促す「キャッチアップ計画」を策定・実行するよう求めていた(予算管理庁8月10日)。

今後のGDP成長見通しに関して、政府は通年の経済成長目標の6.0~7.0%を達成できるかどうか見通しを明らかにしていない。しかし、バリサカン長官は「通年目標を達成するためには、最低でも2023年第4四半期(10~12月)に7.2%の成長率を達成する必要がある」と述べた(「マニラ・タイムス」11月10日)。

(西岡絵里奈、アセンシオ・アシュレイモイラ)

(フィリピン)

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