2023年第4四半期の米家計債務、クレジットカードや自動車ローンで延滞率上昇
(米国)
ニューヨーク発
2024年02月07日
米国ニューヨーク連銀は2月6日、家計債務と信用に関するレポートを公表した。本レポートは四半期に1度公表されており、今回は2023年第4四半期(10~12月)の状況が調査対象。クレジットカードローンや自動車ローン、住宅ローン、教育ローンなど、ローン種別ごとに残高や延滞率などの数値が公表されている。
残高に関しては、家計債務全体では、17兆5,030億ドルと前四半期(17兆2,910億ドル)から2,120億ドル増加し、前年同期比でみると3.6%の増加になった。内訳では、クレジットカードローンの残高は過去最高値となる1兆1,290億ドル(前四半期1兆790億ドル、前年同期比14.5%増)となった。年末商戦は好調に推移した(2024年1月23日記事参照)が、柔軟な後払い決済サービス〔バイナウ・ペイレーター(BNPL)〕やクレジットカードなどによる借り入れに大きく頼りながらの消費だったことが示唆される。自動車ローンは1兆6,070億ドル(前四半期1兆5,950億ドル、前年同期比3.5%増)、住宅ローン(リボルビングを含む)は12兆6,120億ドル(前四半期12兆4,890億ドル、前年同期比2.9%増)、教育ローンは1兆6,010億ドル(前四半期1兆5,990億ドル、前年同期比0.4%増)だった。
他方、各種ローンの延滞率も増加している。事実上の債務不履行とみなされる90日以上延滞率をみると、全体では新型コロナ禍前を下回っているものの、これは住宅ローンのロックイン効果(注1)や教育ローンに関する特殊要因(注2)によるところが大きく、比較的償還期間の短いクレジットカードローンや自動車ローンの延滞率は急速に悪化している。具体的には、クレジットカードローンでは6.4%(前四半期5.8%)と7四半期連続で上昇し、5%台前半で推移していた新型コロナ禍前の2019年の水準を大きく上回っており、2011年以来の高水準となっている。同様に、自動車ローンについても2.7%(前四半期2.5%)と8四半期連続で上昇、こちらも2019年の水準(2.3%台)を上回る水準が続いている。2023年第4四半期は賃金上昇率がインフレ率を上回り、実質賃金の増加がみられたにもかかわらず、延滞率の上昇が継続していることは、若年層をはじめ一部の層において金利高の影響が賃金面でのプラスの効果を上回っている可能性を示している。高金利は今後、本格的に消費の押し下げ要因となっていきそうだ。
(注1)金利上昇局面において、過去に低金利で住宅ローンを組んだ者が、住み替えによる金利負担上昇を嫌い、現在保有する住宅に住み続けるようになる現象。
(注2)教育ローンに関しては、バイデン政権の政策により、2024年第4四半期までは支払いが滞った場合でも信用機関に報告されないこととなっている。
(加藤翔一)
(米国)
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