連邦政府、新車乗用車などのCO2排出量の上限値基準案を公表

(オーストラリア)

シドニー発

2024年02月20日

オーストラリア連邦政府のクリス・ボーウェン気候変動・エネルギー相とキャサリン・キング・インフラ・交通・地方開発・地方政府相は2月4日、同政府が導入を目指している「新車効率性基準」(New Vehicle Efficiency Standard:NVES)について、2023年4月に続いて2回目のコンサルテーションペーパーPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を公表した。加えて、2025年1月からの同基準施行を目指し、可能な限り早く法制化すると表明した。新車の乗用車と小・中型貨物車(車両総重量4.5トンまで、注1)が対象で、中古車は対象外となる予定だ。

コンサルテーションペーパーで示した基準案では、自動車の車種別に1キロメートル当たりの二酸化炭素(CO2)排出量(グラム)上限値を設定する。自動車サプライヤー(例:オーストラリアに車を輸入する企業)はその年の販売実績でCO2排出量が上限値を超過した場合は、上限値以下に抑えたサプライヤーから「クレジット」を購入しなければならない。また、1キロ当たり1グラムを超えるごとに40オーストラリア・ドル(約3,920円、豪ドル、1豪ドル=約98円)、100豪ドル、200豪ドルのペナルティーを課す案を示している。上限値が導入された場合、2029年まで毎年段階的に厳しくする案が検討されている(注2)。基準案のうち、政府が推奨するオプションB案が導入された場合、2024年から2029年までの5年間のCO2総排出量を乗用車の場合は61%、小・中型貨物車は62%削減可能と試算している。

連邦政府、パブリックコメント受け付け開始

連邦政府は、2023年4月に発表した同国初の国家EV(電気自動車)戦略で、新車の燃費基準(Fuel Efficiency Standard、注3)を新たに策定・導入すると表明していた。その後、2023年4月から5月末まで基準の策定に関して、1回目のパブリックコメントを実施(2023年5月10日記事参照)し、約2,700件の意見提出があった。これらを踏まえて、今回、コンサルテーションペーパーに示した連邦政府の基準案とその影響について、再び2024年3月4日までパブリックコメントを実施する。

自動車業界、基準案について議論開始

公共放送ABC(2月13日付電子版)は、フォルクスワーゲン、起亜、現代自動車などが基準案をおおむね支持していると報じた。また、同日にBMW、ボルボ、フォード、テスラ、現代自動車、トヨタなど多くの自動車メーカーがメンバーとなっている連邦自動車産業会議所(FCAI)の理事会で新基準案について議論した。

(注1)連邦政府が規定するオーストラリア・デザイン・ルール(Australian Design Rules: AD)にあるMカテゴリー(乗用車)、Nカテゴリー(貨物車)の一部に該当するもの。具体的には、Mカテゴリーは、MA(乗用車)、MB(フォーワードコントロール乗用車)、MC(オフロード乗用車)、Nカテゴリーは、NA(車両総重量が3.5トンを超えない小型貨物車)、NB1(車両総重量が3.5トンを超え、4.5トンまでの中型貨物車)の一部が基準の対象車になる予定。

(注2)コンサルテーションペーパーでは、NVESを導入しない場合(ベースライン)に加えて、幾つかの条件(車種別・年別のCO2排出上限値、クレジットの取り扱い、対象車種、ペナルティーの金額など)に応じた3種類の案(オプションA案、B案、C案)を示している。

(注3)連邦政府は、1回目のパブリックコンサルテーションペーパーでは、基準名について燃費基準(Fuel Efficiency Standard)という名前を使用していたが、今回は「新車効率性基準」(New Vehicle Efficiency Standard:NVES)へと名称を変更した。

(青島春枝)

(オーストラリア)

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