中国外相のチュニジア訪問にみられるチュニジア外交の変化

(チュニジア、中国)

パリ発

2024年01月25日

中国の王毅・共産党中央政治局委員兼外交部長(以下、外相)は1月14日夜、1991年以降恒例となっている年頭の中国外相によるアフリカ諸国歴訪の一環で、今回の訪問先4カ国の2カ国目であるチュニジアに到着し、翌15日に同国のカイス・サイード大統領と会談した。サイード大統領は会談の中で、保健、農業、スポーツ、インフラ、再生可能エネルギーなどの分野における中国とのパートナーシップ構築への期待を表明した。次いで、ナビル・アンマル外務・移民・在外チュニジア人相(以下、外相)とも実務会談が行われた(2024年1月19日記事参照)。なお、同日には、2024年1月10日に60周年を迎えた両国間の国交樹立を記念し、中国の寄付により建設された「チュニス国際外交アカデミー」の開校式が大統領および両外相の出席の下、開催された。

アルジェリア、モロッコ、エジプトといった近隣の北アフリカ諸国と比較して中国との関係が薄かったチュニジアだが、サイード大統領の就任以降、中国の融資によるインフラ施設の建設が相次いでいる。上記アカデミーのほか、2020年のスファックス大学病院の開設、2022年のチュニス郊外ベン・アルースでの文化・スポーツセンターの開設などが挙げられる。さらに2024年1月3日には、北部ビゼルトの新橋建設を中国の四川路橋集団(SRBG)が落札している。

このチュニジアの中国への接近について、フランス紙「ル・モンド」は、「2023年にアフリカから欧州への不法移民対策におけるチュニジアの役割に関する意見の相違から、伝統的な主要パートナーであるEUとの関係が悪化(2023年10月12日記事参照)したことを受け、チュニジアはパートナーを多様化する必要があるという文脈に位置づけられ、サイード大統領のEUに対する政治的牽制と捉えられる」と解説している。

(渡辺智子)

(チュニジア、中国)

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