CPTPP発効1年でマレーシアの貿易投資にプラス効果、輸出先首位は日本

(マレーシア)

クアラルンプール発

2024年01月05日

マレーシア投資貿易産業省(MITI)は2023年12月28日、「環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)は貿易と対内直接投資の増加に貢献」と題する声明を発行し、発効1年を経ての協定の効果を強調した(MITIプレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。

マレーシアは2022年9月30日にCPTPPを批准し、同年11月29日に同協定は発効していた(2023年1月5日記事参照)。今回のリリースによれば、2022年11月29日~2023年10月31日の間に、CPTPPを利用したマレーシアからの輸出総額は15億8,000万リンギ(約490億円、1リンギ=約31円)、同期間にMITIが発行した特定原産地証明書は4,482件に上る。輸出先は日本が最多で、次いで、メキシコ、カナダ、ペルーと続く。2023年1~9月の加盟国向け輸出では、石油製品が前年同期比15%増に拡大。鉄鋼製品と繊維製品もそれぞれ2%増加した。MITIは、今後、加盟国で関税削減が進展すれば輸出はさらに伸びる、と期待を示した。

MITIは、CPTPPによりマレーシアの対内直接投資も拡大したと説明した。2023年第3四半期時点の対内直接投資残高は、前期比149億リンギ増の9,149億リンギに上った。CPTPPによる自由化と投資増との因果関係は不明だが、日本からの投資は、2022年比で40億リンギ、オーストラリアからは10億リンギそれぞれ増加した。また、マレーシア投資開発庁(MIDA)によれば、2023年1~9月にCPTPP加盟国から新規に181件の投資案件(29億4,000万ドルが認可され、約1万1,000人の雇用創出があると推計されている。

MITIは、中小企業を含むマレーシア国内企業が、CPTPPを最大限活用できるよう今後も取り組みを推進するとした。物品貿易以外のメリットとして具体的に、専門サービスの輸出拡大(リリース資料5.)、専門家の国際労働移動による知識移転や多様性ある労働力の創出(同6.)、電子商取引の促進と障壁軽減(7.)、他加盟国政府調達へのマレーシア企業参画の可能性拡大(8.)、中小企業による情報共有と世界的サプライチェーンへの統合(9.)、知的財産権の保護、中小企業の環境・社会・企業統治(ESG)基準導入に対する支援拡大(10.)、農業・工業・サービス部門における能力開発(11.)などを挙げた。

さらなる普及啓発の重要性を認識

一方、これに先立つ2023年12月12日にMITIは、国内企業によるCPTPPと地域的な包括的経済連携(RCEP)の利用がいまだ少なく、関税減免の恩恵が十分に受けられていないとの見解も示していた(マレーシア議会PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、マレー語のみ)。この文書によれば、2022年3月18日~2023年11月30日にMITIは、CPTPPの原産地証明書を5,224件(19億1,000万リンギ相当)、RCEPは2,624件(8億9,799万リンギ相当)を発給。「両協定における加盟国の関税引き下げスケジュールを企業が理解し、最も恩恵を受ける製品を特定するにはまだ時間がかかる」と指摘した。MITIは、自由貿易協定(FTA)普及啓発のための産業界とのエンゲージメントセッションに重きを置いており、2023年中は20回以上こうした会合を開いた。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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