世界銀行、スリランカGDP成長率は2023年マイナス3.8%、2024年1.7%と予測

(スリランカ)

調査部アジア大洋州課

2024年01月23日

世界銀行は1月9日、「世界経済見通し外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」で、スリランカの2023年の実質GDP成長率(推定)をマイナス3.8%(暫定値、前回予測から0.5ポイント引き上げ)と発表した(2024年1月11日記事1月19日記事参照)。また、2024年度の成長率は1.7%とし、前回(2023年6月)の見通しから0.5ポイント引き上げた。

同国についてのポイントは次のとおり。

  • 民間セクターへの与信が年間を通じて低迷し、経済活動に悪影響を与えたため、スリランカ経済は2023年に縮小した。
  • 需要の減退に伴って消費者物価上昇率は低下し、中央銀行は2023年半ばから政策金利の引き下げを開始した。
  • 中国やパリクラブ(注1)を含む主要な公的債権者と当局が合意に達し、国内債務の最適化計画が実施されるなど、ソブリン債務の再構築には進展が見られた。
  • 同国の今後の見通しについて、2024年は民間債権者との債務再編交渉や潜在成長率向上のための構造改革が実施される中、不安定な状態が続くとみられる。
  • 南アジア地域(SAR、注2)の財政政策は、2024年には財政赤字がわずかに縮小するものの、引き続き成長の足かせとなることが予測される。スリランカのほか、インド、パキスタンなど債務残高の多い国では、利払いが大きくなる。
  • スリランカの2025年の成長率は2.4%を見込み、経済はプラスに向かう。
  • スリランカ、モルディブ、パキスタンを含む同域内諸国の成長下揺れリスクとして、対外および財政資金需要の伸びとともに、金融市場の混乱に対する脆弱(ぜいじゃく)性も高まっている。金融セクターのストレスや財政状態の悪化に反応して、市場のセンチメント(注3)が突然変化する可能性がある。

(注1)日本など先進国が構成する主要債権国会議。

(注2)世界銀行の区分では、アフガニスタン、インド、スリランカ、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、ブータン、モルディブの8カ国を指す。

(注3)市場心理を指す。センチメントは、市場の流れの中で形成され、予想外の好材料や悪材料によって瞬時にして変化することも多い。

(寺島かほる)

(スリランカ)

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