12月の米雇用者数は21.6万人増、失業率3.7%と横ばい、賃金の伸び高止まり

(米国)

ニューヨーク発

2024年01月09日

米国労働省が1月8日に発表した12月の非農業部門雇用者数PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は前月から21万6,000人増と、市場予想の17万人増を大きく上回った。また、10月の数値が15万人増から10万5,000人増に、11月の数値が19万9,000人増から17万3,000人増にそれぞれ下方改定された。

就業者数は前月から68万3,000人減少し、失業者数は6,000人増加した。失業者のうち、一時解雇の失業者は前月より2万8,000人増の91万7,000人、恒常的失業者は前月より4万6,000人減の154万3,000人だった。労働参加率は、生産年齢人口が前月から16万9,000人増の2億6,799万人、労働力人口が前月から67万6,000人減の1億6,745万人となった結果、前月から0.3ポイント低下の62.5%に大きく低下した。

以上の要因を踏まえた失業率は、前月と変わらず3.7%だった(添付資料図1、表1参照)。市場予想の3.8%よりも低い数値となったが、労働参加率の低下が寄与したかたちだ。失業率について年齢別で見ると、25~54歳のいわゆるゴールデンエイジの失業率は前月から0.2ポイント上昇して3.3%、55歳以上は前月から0.1ポイント低下の2.8%、16~24歳の若年層は前月と変わらず8.0%だった。

12月の雇用者数の前月差21万6,000人増の内訳を見ると、民間部門は16万4,000人増、うち財部門が2万2,000人増、主な業種としては建設業が1万7,000人増、製造業が6,000人増だった。

サービス部門は14万2,000人増、主な業種では、教育・医療サービス業が7万4,000人増、外食サービスを中心とした娯楽・接客業が4万人増と、この2部門が引き続き牽引しているかたちだ。情報業は1万4,000人増と2カ月連続のプラス、対事業所サービスは1万3,000人増、商業・運輸・倉庫業は横ばいだった。政府部門は5万2,000人増だった(添付資料図2、表2参照)。

平均時給は34.27ドル(前月34.12ドル)で、前月比0.4%増(前月0.4%増)、前年同月比4.0%増(前月4.0%増)だった。市場予想は前月比0.3%増、前年同月比4.1%増で、いずれも市場予測を上回った。前年同月比でみて伸びが高かった業種は製造業(5.7%)金融業(5.0%)、建設業(4.6%)など、伸びが低かった業種は教育・医療サービス(2.5%)、情報通信業(3.6%)と、前月と同様の構成だった。

今回の雇用統計は、新規雇用者数は20万人を上回っているものの、10~12月の3カ月平均では約16万人となり、ほぼ巡航速度に回帰しつつある。また、失業率は横ばいとなったものの、これは労働参加率の低下によるところが大きく、雇用情勢が徐々に軟化していることを示していると言えそうだ。また、今回公表された雇用統計以外の統計でも、例えば、全米供給管理協会(ISM)が公表している景況感指数では製造業・非製造業ともに、雇用を大きく減少させ始めていることが示唆されている。

他方で、雇用情勢に軟化のサインが見られ始めているにもかかわらず、賃金上昇率は高止まりしている。賃金上昇率が高く保たれることは、エネルギー価格の下落などに牽引されてインフレ率が低下(2023年12月13日記事参照)する中で実質賃金を上昇させ、短期的には消費を下支えする可能性がある。一方で、高い賃金上昇率の継続はサービス価格の高止まりを招き、インフレ率の低下の遅れに伴って、連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めの長期化につながる恐れもある。また、生産性の上昇を伴わなければ、企業収益を圧迫する材料にもなりかねない。中期的には米国経済にとってマイナスにもなり得ることから、賃金の動向については注意が必要だ。

(加藤翔一)

(米国)

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