11月の米消費者物価指数、前年同月比3.1%上昇とわずかに鈍化、コアは横ばい

(米国)

ニューヨーク発

2023年12月13日

米国労働省が12月12日発表した11月の消費者物価指数(CPI)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は前年同月比3.1%上昇と、前月の3.2%上昇からわずかに鈍化した。変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数は前月と変わらず同4.0%上昇だった。いずれも市場予測と合致した。

前月比では、CPIは0.1%上昇〔前月横ばい(0.0%)〕、コア指数は0.3%上昇(前月0.2%上昇)といずれも小幅に上昇した(添付資料図参照)。

品目別に前年同月比でみると、エネルギーは5.4%下落(前月4.5%下落)と引き続き下落幅が拡大した。うち、ガソリンは8.9%下落(前月5.3%下落)した。

食料品は2.9%上昇(前月3.3%上昇)で、うち外食は5.3%上昇(前月5.4%上昇)と伸びが引き続き鈍化した。

財は横ばい0.0%(前月0.1%上昇)と、2022年9月以降ほとんど上昇していない。内訳では、中古車が13カ月連続のマイナスとなる3.8%減(前月7.1%減)となったほか、新車も1.3%上昇(前月1.9%上昇)と伸びが鈍化している。

サービスは前月から変わらず5.5%上昇だった。物価のうち約3割のウエートを占める住居費は、前年同月比6.5%上昇(前月6.7%上昇)とわずかに鈍化した。内訳では、帰属家賃は6.7%上昇(前月6.8%上昇)、賃料は6.9%上昇(前月7.2%上昇)だった。また、自動車保険など輸送サービスが上昇した結果、住宅を除くサービス価格は3.5%上昇(前月3.0%上昇)となった。医療サービスは0.9%下落(前月2.0%下落)した(添付資料表参照)。

今回の結果は市場予測と合致しており、大きなサプライズはなかったものの、これまでと同様に住居費がネックとなり、コア上昇率の低下は足踏みした。住居費は前年同月比でみた場合、一般的に住宅価格から18カ月程度遅行するといわれており、今後徐々に低下していくことが期待されるものの、依然として高い水準であるほか、前月比でみると0.4%上昇した。今後、どの程度のペースで鈍化していくのか引き続き注視が必要だ。

金融政策との関係について、米国金融大手サンタンデールUSキャピタル・マーケッツの米国担当チーフエコノミスト、スティーブン・スタンレー氏は「1年前から状況は良くなっているが、これがインフレの本流だとすれば、現時点で金融緩和が間近に迫っているとは考えられない。(FRBの物価目標である)2%からは依然として程遠いからだ。早期の利下げを期待する市場の楽観は、今のところ早計だとみている」(「ブルームバーグ」電子版12月12日)と述べるなど、総じて市場の早期利下げ観測期待を後退させるものとなったようだ。11月の雇用統計(2023年12月11日記事参照)の結果なども踏まえれば、12月12~13日に行われる次回の連邦公開市場委員会(FOMC)会合では利上げは見送りつつも、現在の引き締め的な金融政策は維持されることになりそうだ。

なお、米国民生活に直結するインフレ動向は2024年大統領選挙に向けても重要なイシューとなっている。ジョー・バイデン大統領は今回のCPI結果について声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表し、「インフレを抑制し、米国の家庭のコストを削減する継続的な進歩を示している。インフレ率はピーク時から3分の2程度低下した」と述べ、インフレ抑制の進捗を歓迎した。一方で、「多くの米国人が依然として手の届かないものが多すぎる」と述べ、具体的には、インスリンや処方薬のコスト削減(2023年12月11日記事参照)などに取り組んでいくとしたほか、企業に対し、バイデン政権のサプライチェーン強化の取り組みによって下がった投入コストを消費者に還元していくよう求めた。また、メディケア・メディケイドを含め大規模な歳出削減を求める共和党に対して、「彼らの唯一の計画は最も裕福な米国民と大企業にさらなるプレゼントを提供することだ。共和党が富裕層や大企業のために戦い、その代償を勤勉な家庭に支払わせようとしているが、私はコストを削減し、強力な中間層とともに経済を成長させるために戦い続ける」と述べた。

(加藤翔一)

(米国)

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