インドネシア商工会議所、大統領に立候補の3氏とダイアログ実施

(インドネシア)

ジャカルタ発

2024年01月18日

2月14日に投開票が行われるインドネシア大統領選挙に向け、1月11日から12日にかけて、立候補の3氏を個別に招いた対話会合がインドネシア商工会議所(KADIN)主催で開催された。

KADINは国内全土に約9万社の会員を持つ商工団体だ。対話会合は、KADINの産業別委員会や地方の代表らから経済分野の質問を各候補に投げかける形式で行われ、「産業の付加価値向上」「エネルギートランジション」「農業の生産性向上」「税収向上」「国営企業と民間企業の役割」などが論点となった。

「産業の付加価値向上」では、「原材料、資本材などの輸入依存度が依然として高いことから、輸入禁止措置の導入は一部の製造業の生産に支障を来す結果となっている。国内製造活動に支障を及ぼさない前提で、どのように輸入代替政策を進めるか」との質問があった。

アニス・バスウェダン候補(前ジャカルタ特別州知事)は「インドネシアは単なる消費市場となるだけでなく、グローバル市場向けの製造拠点となることも目指す」とした上で、「現在の製造活動に支障を来さないことが大前提だ。国産化率向上は段階的に進める。また、製造拠点ハブを目指す上で外資導入を進めるが、そのためには中央・地方政府が足並みをそろえ、外資が参入しやすい環境整備が必要だ」と述べた。「現状では輸出は天然資源に頼っている。産業の付加価値向上に資する新たな輸出産業の開発を進めることができるのか」との質問に対し、プラボウォ・スビアント候補(国防相)は「ジョコ・ウィドド現政権が推し進めている産業の川下を含めた高付加価値化(注)を鉱物資源、植物、海洋資源の21分野まで広げて推進する」と述べた。

「エネルギートランジション」については、「約1億人が低購買力層という状況で、2060年までのネットゼロエミッション達成をコミットしているが、そのためにエネルギー補助金と国民負担増のバランスをどう取るか」との質問に対し、アニス候補は「補助金なしのトランジションはあり得ない。国として法規制の整備を進め、トランジションの対象となる事業者とともに、現実的なロードマップを描くことが必要」と述べた。ガンジャル・プラノウォ候補(前中部ジャワ州知事)も、「一足飛びではなく、段階的措置で臨むべき。また、ソーラーパネルの自国生産や、地熱発電などの開発に注力することも必要だ」と述べた。

この対話の様子は、以下のKADINオフィシャルYouTubeから閲覧可能(インドネシア語)。

(注)サプライチェーンの川下を含めた高付加価値化のことで、政府は下流化(hilirisasi)という単語を多く用いる。現在、鉱業の高付加価値化を目指し、ニッケルの未加工鉱物状態での輸出を2020年1月から禁止しており、その他の鉱物についても輸出禁止を示唆している(2023年3月14日記事参照)。

(吉田雄介)

(インドネシア)

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