2023年のインフレ率は4.66%、中銀予測を上回る
(メキシコ)
メキシコ発
2024年01月16日
メキシコ国立統計地理情報院(INEGI)は1月9日のプレスリリースで、2023年12月末時点の全国消費者物価指数(INPC)の前年同月末比上昇率(2023年の年間インフレ率)は4.66%と発表した。過去12カ月のINPC上昇率は2022年12月末時点では7.82%だったが、2023年10月末時点では4.26%まで低下していた(添付資料図1参照)。しかし、2023年11月末に4.32%と上昇傾向に転じていた。メキシコ中央銀行は政策金利を2023年3月31日から11.25%まで引き上げ(添付資料図2参照)、高いインフレ率の抑制に注力したが、中銀が12月14日付プレスリリースの中で発表したインフレ率の目標予測値4.4%をわずかに上回った(添付資料表参照)。
2023年12月のコアインフレ率(注1)は、前年同月比5.09%と前月より0.21ポイント低下し、2023年1月から低下傾向が続いている。内訳をみると、「財」は前年同月比4.89%、そのうち「食品・飲料・たばこ」が6.25%と最も高く、次いで「食品を除く財」が3.28%だった。一方、非コアインフレ率は、3.39%と前月より1.96ポイントも上昇し、特に「野菜・果実」は11.68%と前月と比べ6.09ポイントも上昇した。
インフレ率の上昇を誘発する複数の要因
これまで、中銀はコアインフレ率の動向に注視してきたが、ここにきて、非コアインフレ率の急上昇がインフレ率の押し上げ要因となった。ベ・ポル・マス銀行主席エコノミストのアレハンドロ・サルダーニャ氏は「中期的に農産物にとってリスクとなっている気候要因に注意を払う必要がある。地方では近年、異常な干ばつが発生しており、価格の上昇を引き起こす可能性がある」と述べた(「エル・フィナンシエロ」紙2024年1月10日)。また、最低賃金も2024年1月から前年より20%上昇しており(2023年12月15日記事参照)、消費意欲を刺激するため、インフレが加速する可能性がある。さらに、メキシコ政府が進める福祉政策と4大インフラプロジェクト(注2)に対する歳出増で2024年の財政収支が赤字になる見通しにあり(2023年9月14日記事参照)、バンコ・バセのガブリエラ・シラー経済アナリストは「GDP比4.9%に相当する財政赤字もインフレリスクになり得る」と示唆した(「エクスパンシオン」2024年1月10日)。政策金利が据え置きになっており、金利引き下げの期待が高まるが、足元ではインフレ上昇リスクを抱える中で、2024年2月の金融政策決定会合の結果に注目が集まる。
(注1)天候などによって価格変動が大きい農産品やエネルギー価格、政府の方針で決定される公共料金を除いた価格の指数。
(注2)アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール政権下で進められてきた4大インフラプロジェクトのうち、マヤ観光鉄道(2020年5月25日記事参照)およびテワンテペック地峡開発(2023年7月4日記事参照)への公共投資が拡大している。
(阿部眞弘)
(メキシコ)
ビジネス短信 1932f429eb737375