米司法省、輸出管理改革法違反の疑いで米実業家を逮捕と発表

(米国、ロシア、ウクライナ、イスラエル)

ニューヨーク発

2024年01月25日

米国の司法省は1月18日、米国の半導体や機微技術を、ロシアの利益のために、数年にわたり不法に輸出していた疑いにより、米国(注)の実業家を逮捕したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。当該人物は、輸出管理改革法(ECRA)に違反したとして、刑事告訴されている。

当該人物はカリフォルニア州とニューヨーク(NY)州に本社を置く2つの企業の所有者で、これらの企業を、表向きはセキュリティー・ソフトウエア開発や軍用アビオニクス(航空電子機器)および宇宙関連企業向けのシリコン・ウエハーの試験を行っているとして運営しながら、適切な輸出許可(ライセンス)を取得することなく、ロシアの事業体へ米国の機微かつ高度な電子機器を輸出していた疑いがもたれている。

法務省の発表によると、当該人物はロシアのエルビーズ社に対して、2019年に米国原産の複数のマイクロコントローラーを、2022年に米国原産のネットワーク・インターフェース・コントローラーと無線周波トランスミッターを香港の船会社を経由して輸出した。これらの品目はいずれも、国家安全保障の確保と反テロリズム対策の観点から商務省の輸出許可が必要だったが、当該人物はこれを取得していなかった。当該人物はまた、ロシアのウクライナ侵攻後、エルビーズが設計した半導体を製造した台湾企業がロシアへの出荷を拒否した後も、当該半導体を米国に送り、NY州のジョン・F・ケネディ国際空港に拠点を置く運送会社を通じてロシアに再輸出するよう手配したという。その際、米国の制裁を回避するため、香港などを積み替え地として利用したとされている。なお、エルビーズは、米国商務省産業安全保障局(BIS)によって2022年3月にエンティティー・リストに掲載されたほか、2022年9月に財務省外国資産管理局(OFAC)によって、金融制裁の対象である「特別指定国民(SDN)」に指定されている。

本事案は現在、連邦捜査局(FBI)とBISのNY支局が捜査しており、仮に有罪判決を受けた場合、当該人物は最高で懲役20年となる可能性があるという。また本事案は、商務省の破壊的技術ストライクフォース(2023年5月18日記事参照)と司法省のクレプトキャプチャー・タスクフォースが連携した。

今回の発表において、司法省国家安全保障部のマシュー・オルセン次官補は、米国の制裁法や輸出管理法の違反は「わが国の安全を危険にさらすものであり、司法省の全力をもって対処することになる」と述べた。また、BISのマシュー・アクセルロッド次官補は「ウクライナにおけるロシアの不当な戦争を支援する勢力への半導体や機微技術の流出阻止は、BISと破壊的技術ストライクフォースのパートナーにとって、極めて重要な優先事項だ」と述べた。

米国では昨今、安全保障の確保において輸出管理が占める役割が大きくなっており、BISは2023年の執行実績において、法執行機関と連携した輸出管理規則違反の取り締まりに注力している旨を報告していた(2024年1月18日記事参照)。

(注)司法省は当該人物について、米国、ロシア、イスラエルの重国籍者としている。

(赤平大寿)

(米国、ロシア、ウクライナ、イスラエル)

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