産業用電気料金、ICPTサーチャージを据え置き、引き下げ期待する産業界からは不満も

(マレーシア)

クアラルンプール発

2023年12月27日

マレーシアのエネルギー移行・公益事業省傘下のエネルギー委員会(ST)は12月22日、2024年上期(1月1日~6月30日)にマレー半島に適用する電気料金の詳細を発表した(STプレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、マレー語のみ。国営電力会社テナガ・ナショナルのウェブサイトには英語解説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますあり)。燃料価格の変動に合わせて電気料金を調整するコスト消費者転嫁(ICPT)メカニズムに基づく産業・商業用サーチャージは、2023年下期から据え置き、1キロワット時(kWh)当たり17セン(0.17リンギ、約5.2円、1リンギ=約30円)とした。低電圧(Tariff B、D)、特定農業(Tariff H、H1、H2)、清掃・水道業者向けも、現行の3.7センを据え置く。ICPTメカニズムは、ケダ州のクリム・ハイテクパークには適用されない。

他方、家庭向けでは一部に値上げが見込まれる。月間電力使用量が600超1,500kWh以下の家庭で、従来提供していた1kWh当たり2センの値引き措置を撤廃する。実質的な値上げに相当し、該当する約120万家庭で約4.2~6%電気料金が引き上がると推計される。使用量1,500kWh超の家庭については、10センのサーチャージを引き続き課す。一方でSTは、今回の電力料金調整によって、85%のユーザーは影響を受けないとも指摘した。

発表を受け12月23日、以前からICPTサーチャージの引き下げを要請していたマレーシア製造業者連盟(FMM)のソー・ティエンライ会頭は「政府は電気料金を調整する際に、きちんと産業界と議論すべきだった」と、失望を露わにした。政府は1年前の2022年12月にも、ICPTサーチャージを1kWh当たり3.7センから20センへ大幅に引き上げると急きょ発表し、産業界から反発が出ていた(2023年6月26日記事参照)。FMMも、昨今の燃料価格の世界的な下落傾向に従い、2024年上期のICPTサーチャージは現行より引き下がると予測していたため、特に多くの中小企業が契約する中電圧帯の料金に関しては、より丁寧な協議や説明が必要との見解を示した。

ICPTメカニズムは2015年に導入された(2014年11月5日付STプレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。テナガ・ナショナルのウェブサイトでは、契約体系に応じた電気料金のシミュレーションが可能だ(電気料金計算ツール外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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