産業用の中・高電圧電気料金、2023年下期は引き下げ

(マレーシア)

クアラルンプール発

2023年06月26日

マレーシア天然資源・環境・気候変動省(KETSA)は6月23日、2023年下期にマレー半島に適用する電気料金を発表した(同省プレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。燃料価格の変動に合わせて電気料金を調整するコスト消費者転嫁(ICPT)メカニズムを引き続き適用し、同メカニズムに基づく追加料金について、家庭用は一部のみ引き上げ、産業用は据え置き、ないし引き下げる。

多くの製造業企業が該当する産業用の中電圧・高電圧契約向けは、ICPTメカニズムによる追加料金を現行の1キロワット時(kWh)当たり20セン(0.2リンギ、約6円、1リンギ=約31円)から17センへ引き下げる。ニック・ナズミ天然資源・環境・気候変動相によると、これによって中・高電圧契約の電気料金は28~35%程度値下がりする見通し。低電圧契約には3.7センを引き続き適用する一方、清掃・水道業者向けは現行の20センから3.7センへ引き下げる。

一般家庭向けは、消費電力量が1,500kWh(電気料金換算708リンギ)以下は据え置くが、これを超える場合は、1kWh当たり10センの追加料金を適用する。同大臣は「影響を受けるのは全体の1%に当たる83,000世帯のみ」「値上がりは月最低25%、187リンギ程度」との見通しを示した。

KETSAは、平均燃料価格が1トン当たり224ドルから173.5ドルへ下落した一方で、石炭価格が高止まりしていることから、ICPTの適用継続を決めたとしている。これに先立つ6月16日には、2023年下期の電力補助金として総額52億リンギの割り当てを決定していた。

産業向け電気料金、発表受けた反応はまちまち

KETSAは2022年12月に、中・高電圧契約者に適用するICPT追加料金を1kWh当たり3.7センから20センへ大幅に引き上げていた。該当する事業者はおおむね3~4割の電気料金値上げに直面し、製造業者連盟(FMM)をはじめ、多くの業界団体が反対声明を繰り返し発出していた。さらに、アンワル・イブラヒム首相は2023年2月に同年度の修正予算案を発表した際、「大企業向けの電気料金は今後引き上げる」という趣旨の発言をしており、さらなる値上げに対する懸念が広がっていた。

FMMは6月24日、今回の発表を基本的には歓迎しつつも、「20センから17センへの引き下げは予想よりはるかに小幅で、次回はさらに下げてほしい」との声明PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。2月に受け付けを開始したグリーン電力タリフ(2023年2月13日記事参照)が購入枠の上限に達したことを受け、同制度の継続にも期待を示した。他方で、経営者連盟(MEF)は上記52億リンギの補助金が中小零細企業のコスト負担軽減に奏功すると評価したほか、さらなる値上げがされなかったことに安堵(あんど)する中小零細企業の声が報じられた。

マレーシアの産業用電気料金体系は、国営電力会社テナガ・ナショナルのウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます「Industrial Tariffs」部分で確認できる。ICPTに関する解説と請求書の見方も掲載されている外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(6月26日現在は2023年上期の情報)。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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