バイデン米大統領、第三国経由で輸入されるロシアのダイヤモンドや海産物の輸入を禁止する大統領令を発表

(米国、ロシア)

ニューヨーク発

2023年12月28日

米国のジョー・バイデン大統領は12月22日、ロシアへの制裁を強化する大統領令を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。2021年4月に発表された大統領令(2021年4月16日記事参照)などを改定し、制裁対象となる金融機関を拡大するほか、ロシアのダイヤモンドや海産物の輸入禁止措置を強化する。

ホワイトハウスが発表したファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、今回の大統領令で新たに追加される措置は、大きく分けて次の3点となる。

〇ロシアの軍事産業基盤を支援する金融機関を対象とする制裁

ロシアは実態のない会社を作り、金融機関を利用して制裁を回避しようとしており、これらのネットワークを根絶するため、(1)米国がロシアの軍事産業基盤を支えているとして制裁を科している企業や個人のために重要な取引を行った、または促進したと判断される金融機関、(2)「特定の重要品目(certain critical items)」の販売、供給、移転を含む、ロシアの軍事産業基盤に関わる重要な取引を行った、または促進した、あるいはサービスを提供したと判断される金融機関に対して制裁できる権限を拡大する。

〇ロシアで採掘、生産などされた特定のダイヤモンドに対する輸入制限

米国とパートナー国は今後数カ月のうちに、ロシアで採掘、加工、生産された特定のダイヤモンドに対する輸入制限を導入する。米国は、ロシアで採掘、採取、生産、または製造された特定のダイヤモンド製品の一部または全部が、たとえ第三国で加工されたものであっても輸入を禁止する。

〇ロシア海域またはロシア籍船で漁獲された海産物の輸入制限

米国は、ロシア海域またはロシア籍船で漁獲された特定の海産物を、たとえそれが第三国で加工されたものであっても輸入を禁止する。

財務省はホワイトハウスの発表と同日、ジャネット・イエレン長官の声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますとともに、特定の重要品目(半導体製造装置、フォトレジスト素材など)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの取引に関わった金融機関を制裁対象とする旨および海産物(サケ、タラ、スケトウダラ、カニ)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますについて輸入禁止を行う旨の行政決定を発表した。いずれも2023年12月22日から有効となっている。なお、2023年12月22日より前に契約しており2024年2月21日までに輸入される海産物には本制裁が適用されないなどの一般許可(General License)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますも併せて発表されている。

議会からは、特にロシアの海産物に対して、規制強化を求める声があがっていた。38人の超党派の下院議員は12月14日、バイデン大統領やイエレン財務長官など政権閣僚に向けて、ロシアの海産物の輸入禁止措置拡大を求める書簡PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を送っていた。書簡によると、多くのロシア産海産物が中国で加工され、米国に中国産として輸入されているという。また、2023年10月までのロシアの海産物の対中輸出は前年比で30%以上増加し、2021年比では2倍以上になっているとしている。

米国は、ロシア関連で科している制裁回避を防ぐため、ロシアを支援している第三国を対象とした制裁を強化している。2023年12月12日には、中国、スイス、シンガポール、キルギス、モルディブ、タジキスタンなどで、ロシアを支援している企業・事業体を新たに制裁対象としていた(2023年12月14日記事参照)。

バイデン政権の主要な対ロシア・ベラルーシ制裁については、添付資料参照。

(赤平大寿)

(米国、ロシア)

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