米FRB、政策金利の誘導目標を発表、市場予想どおり据え置き

(米国)

ニューヨーク発

2023年12月14日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は12月12~13日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利のフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を現在の5.25~5.50%に据え置くことを決定した(添付資料図参照)。3会合連続での据え置きとなる。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の調査では、市場関係者の98%が政策金利の据え置きを予想しており、今回の決定は市場の予想どおり。据え置きの決定は参加者12人の全会一致だった。

今回会合の声明文外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますと前回会合の声明文(2023年11月2日記事参照)との違いは以下3点だ。経済は「第3四半期の好調なペースから鈍化していることを示唆している」とし、前回声明文から下方修正した。また、物価については「この1年間で緩和した」との評価が付け加えられているが、依然として高止まりしているとの判断は維持した。また、インフレ率をFRBが目標とする2%に引き下げるための追加の政策決定に関し、「何らかの(any)」との文言が追加された。この文言は、追加利上げ以外の選択肢もあり得ると受け止められるもので、これまでよりもハト派的なスタンスを示すものとして受け止められている模様だ(「ブルームバーグ」電子版12月13日)。

また、ジェローム・パウエルFRB議長がFOMC後に行った記者会見PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)では、最近の経済・雇用情勢についての認識も示された(添付資料表参照)。経済活動は「第3四半期にみられた急激な拡大ペースから大幅に鈍化していることを示唆している」としつつ〔第3四半期の実質GDP成長率(速報値)は前期比年率4.9%〕、それでも強い消費と供給の改善に支えられ、2023年通年では前年比で約2.5%の成長軌道に乗っているとした。一方、前回会合後の記者会見時と同様に、金利上昇が住宅投資や企業の設備投資を圧迫しているとの認識を示した。金融政策の決定に最も関連する雇用と物価の指標に関し、雇用については、(1)雇用者数は年初のペースを下回っているものの強いペース、(2)失業率(11月:3.7%)は依然として低い、(3)雇用増には労働供給の増加が伴っており、25~54歳の労働参加率は上昇、(4)名目賃金の伸びは鈍化、(5)求人数は減少など、個別の指標に触れながら、全体としては引き続き逼迫しているが、労働需要と供給のバランスの改善は進んでいるとし、前回会合後の記者会見時とほぼ同様の認識を示した。また、物価については、「過去1年間で緩和した」「過去数カ月のインフレ率の低下は歓迎すべきだ」として進捗に一定の評価をしつつも、「依然として長期目標の2%を上回っている」「インフレ率が長期目標に向かって持続的に低下しているという確信を得るためには、さらなる証拠を確認する必要がある」として、前回会合に引き続き、基本的な引き締め的スタンスは維持した。

(加藤翔一)

(米国)

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