IMFが金融支援の初回審査完了、約3億3,300万ドルを追加支援

(スリランカ)

コロンボ発

2023年12月18日

IMFは12月12日、スリランカに対する4年間で総額22億8,600万SDR(約30億ドル、注)の金融支援パッケージ〔拡大信用供与(EFF)プログラム〕の初回審査を理事会で承認し、2億5,400万SDR(約3億3,700万ドル)を追加で拠出すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。IMFの資金援助総額は3月20日のプログラム承認に伴う拠出額2億5,400万SDR(約3億3,300万ドル、当時の換算)と合わせて、5億800万SDR(約6億7,000万ドル)となった。スリランカ政府は10月19日に初回審査結果についてIMFの担当者レベルで合意し(2023年10月26日記事参照)、11月10日には中国輸出入銀行との間で、11月29日には日本、フランス、インドが主導する債権国会合外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで公的債務の再編について合意していた。

IMFは、スリランカが税収や歳出の遅れを除く同プログラムが求める基準を満たしており、同プログラムを満足のいく水準で履行していると評価した。特にスリランカがアジアで初めてIMFのガバナンス診断を受けた点を高く評価するとともに(2023年10月6日記事参照)、債務についての持続可能性の回復、歳入の増加、外貨準備高の増強、インフレ率の低下、金融安定性の確保に向けて、目覚ましい進展を遂げたと指摘した上で、ガバナンスの改善と貧困層への支援を求めた。

今後のスリランカ経済については、2023年の実質GDP成長率をマイナス3.6%と見込む一方、2024年には1.8%のプラス成長に転じ、2025年に2.7%、2026年に3.0%の成長を予測している。また、平均インフレ率は2023年17.9%、2024年7.9%、2025年5.6%、2026年5.4%と、物価上昇の鈍化を予測している。

今後のEFFプログラム履行にはリスクも

他方、12月12日に公開されたIMFの初回審査報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、同プログラムの今後の履行に関するリスクも指摘している。具体的には、債務再編に伴う資金流出や外貨準備高の回復の鈍化、歳入不足に伴う資金の不足、銀行セクターの弱体化、2024年の大統領選挙を控える中で改革への関心低下、為替レートの圧力、債務再編の遅れに対する市場の信用低下、世界的な地域紛争の激化に伴う商品価格の変動や景気後退などを挙げている。加えて、スリランカ政府の歳入が他の新興市場国や中所得国に比べて大幅に少ないと指摘し、2025年までに贈与税や相続税、固定資産税の導入を求めている。

今後についてIMFは、同プログラムの第2回審査までに、スリランカ政府が民間債権者の国際ソブリン債(ISB)の債券保有者や中国の国家開発銀行と基本合意に達するべく、誠実な交渉を行うよう求めている。IMFのスリランカ担当シニアミッションチーフのピーター・ブロイヤー氏は12日の記者会見で、2024年3月~4月にあらためてスリランカに派遣団を送り、債務再編などの目標を満たせば第2回審査が2024年の前半にも完了しうると明かしている。

(注)Special Drawing Rightの略で、特別引出権。通貨ではないものの、その価値はドル、ユーロ、中国人民元、日本円、英国ポンドの5通貨のバスケットに基づいた国際準備資産。

(大井裕貴)

(スリランカ)

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