チリ石油公社とHIF Global、合成燃料の商業化に向けた覚書締結

(チリ、日本)

サンティアゴ発

2023年12月18日

チリ石油公社(ENAP)と米国に拠点を置くグローバル企業HIF Globalは12月5日、チリで再生可能エネルギー由来の合成燃料(E-fuel)の商業化を可能にするビジネスモデルの共同開発を進める覚書に署名した。

これは、HIF Globalがチリ南部マガジャネス州プンタ・アレナス市内カボ・ネグロにあるENAPの工業用地内に建設予定の合成燃料製造プラントで製造した合成ガソリンの商業化を、ENAPが持つ物流網を活用して行うもの。

合成燃料製造プラントは年間に17万3,600トンの合成メタノールと7,500万リットルの合成ガソリンを製造する予定で、投資額は8億3,000万ドルと見込まれている。同プラントの年間推定生産量の30~50%相当となる2,250万~3,750万リットルの合成ガソリンが今回の覚書の対象となっている。加えて、覚書にはHIF Globalのプラントに関する両社の将来的な協力機会の模索も含まれている。ENAPは、今回の合意署名は合成燃料の供給多様化を意味し、2050年までにカーボンニュートラルを達成するというチリの目標に貢献するという自社戦略の新たな一歩と発表している。

HIF Globalが製造予定の合成燃料は、風力発電由来のグリーン水素と、産業部門の活動やバイオマス発電によって生じた、または大気中から回収した二酸化炭素(CO2)とを合成することで生成される。同社のセサル・ノルトン最高経営責任者(CEO)は、ENAPとの協力により、数年以内にチリで「クリーンな燃料」で走行する車両を年間1万5,000台以上とすることを目指すともコメントしている。

日本の燃料大手、合成燃料分野のプロジェクト進める

HIF Globalは2023年4月に出光興産と合成燃料分野でMOUを締結している(2023年4月13日記事参照)。加えて、ENEOSも10月にHIF Globalと合成燃料の製造・供給の協業に関する覚書を締結している。ENEOSの発表によると、覚書には既存のHIF Globalの南米、米国、オーストラリアの製造拠点からENEOSへの合成燃料供給や、HIF Globalが製造した合成メタノールを合成ガソリンやジェット燃料に変換する拠点を日本で建設する可能性の検討などが含まれた。日本の燃料業界大手が合成燃料に関する取り組みを進めている様子がうかがえる。

(岡戸美澪) 

(チリ、日本)

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