国家安全部、中国衰退論への対応示唆、経済安全保障への関与強化

(中国)

北京発

2023年12月25日

中国の国家安全部は12月15日、メッセンジャーアプリ「微信」上の公式アカウントで「経済安全保障の防壁を断固として築き上げる」と題した文書を発表した。12月11~12日に開催された中央経済工作会議(注1)を受けて、経済安全保障に対する関与の方向性を述べたもの。

文書では「経済安全保障は国家安全の基礎」とし、その上で、経済分野は大国間競争の重要な戦場となっており、外部環境の複雑さ、厳しさ、不確実さが増しているとの認識を示した。その上で、経済回復をさらに進めるには、国内の困難を克服するとともに、外部からの挑戦にも対応する必要があるとした。

具体的には、中国経済をおとしめる意図を持つ各種の「常とう句」が絶えず現れているとし、その本質は虚偽を述べて「中国の衰退」という「言葉のわな」「認知のわな」を作り出し、中国の特色ある社会主義制度とその進む道を攻撃、否定し、中国に対する戦略的な包囲・抑圧をたくらむものだとした。

外部による中国経済への見方については、過去3年間の新型コロナウイルス感染拡大、地政学的衝突のグローバル経済への影響、「西側」による「デカップリング」の影響などが無視されているとした。また「安全保障が発展にとって代わる」「(中国が)外資を排斥する」「民間企業を抑圧する」といった虚偽を悪意を持って作り出し、「中国は脅威」という使い古された文句で、安全保障と経済発展の間にあるという矛盾を故意に作り出し、扇動し、拡大していると批判した。その上で、このような行為の本当の目的は市場の期待と秩序を乱し、中国経済の好転する勢いを妨げようとするものだとした。

同部の公式アカウントは12月13日から3日連続で、中央経済工作会議に関する内容を掲載している。13日に「4つの面から中央経済工作会議の精神を学習・会得する」と題した新華社報道を引用、14日には「『6つの全面的な把握』により中央経済工作会議の精神を学習し貫徹する」と題した部内会議の内容を伝える文書を掲載した。14日の記事では国家安全を守るための手段として、経済の質の高い発展に向けて(1)安全保障の安定した環境創出、(2)経済・科学技術の自立自強へのサービス、(3)現代化された産業システム建設の保障、(4)高いレベルの対外開放に対する護衛、(5)経済宣伝と世論誘導強化への協力といった点を挙げた(注2)。

(注1)中央経済工作会議については2023年12月14日2023年12月14日記事参照

(注2)また、11月2日には「金融安全の断固とした守護者となる」との文章を発表、一部の国が金融を地政学的競争の道具にしていると非難し、「空売り」により国際社会の中国に対する投資意欲を動揺させようとするものだとした。

(河野円洋)

(中国)

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