中国、COP28を「重要な一里塚」と評価、先進国による支援未達に不満

(中国、アラブ首長国連邦、世界)

北京発

2023年12月20日

12月13日に閉幕した、アラブ首長国連邦(UAE)での国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)(2023年12月14日記事参照)について、中国からは生態環境部の趙英民副部長を団長とする代表団が参加したほか、個別イベントに丁薛祥副総理、生態環境部の黄潤秋部長らが出席した。

趙副部長は閉幕式のスピーチで、本会議で「UAEコンセンサス」に達したことは、国際社会に力強いメッセージを与え、パリ協定の実現に向けて「重要な一里塚としての意義をもつ」と評価した。その上で、中国は「人類運命共同体」の構築に力を尽くし、パリ協定やカーボンピークアウト・カーボーンニュートラルの目標達成を進めるとした。

また、12月1日の「世界気候サミット」(注1)では、丁副総理が習近平国家主席の特別代表としてあいさつし、(1)多国間主義を実践し、国連気候変動枠組み条約およびパリ協定の目標と原則を堅持し、団結と協力を強化し、相互利益・ウィンウィンを実現する、(2)グリーントランスフォーメーションを加速し、再生可能エネルギー比率を積極的に高め、従来型エネルギーのクリーン・低炭素利用を推進し、グリーン・低炭素な生産方法と生活方法の形成を加速する、(3)実現に向けた行動を強化し、現有の約束を十分に果たす。特に先進国は発展途上国への資金、技術、能力構築支援を強化し、行動によりビジョンを現実にするという3点を提案した。

中国の外交部は12月14日の記者会見で、COP28を「高度に重視している」として、「共通だが差異ある責任」(注2)原則があらためて述べられ、「損失と損害」基金の運用合意(2023年12月8日記事参照)などの重要な決定がなされたと評価した。一方で、先進国の率先した排出量削減や、発展途上国への資金提供と技術、能力構築への支援は実質的な進展がみられておらず、一方的な措置が国際協力を阻害しており、公平で合理的な協力・ウィンウィンのグローバル気候ガバナンスシステム構築への道のりは遠いとした。

清華大学国際関係研究院の唐新華副研究員は、現在の最大の課題は資金問題だとし、先進国から発展途上国に対する年間1,000億ドルの気候変動資金提供は実現していない一方、「損失と損害」基金などで先進国は一部の発展途上国に資金提供を要求する可能性があり、これはパリ協定の実効性と公平性に不利なものになるとした(「環球網」12月14日)。

(注1)丁副総理は12月2日に開催された「『G77カ国グループ(G77)と中国』気候変動サミット」でも、あいさつを行っている。

(注2)地球温暖化への責任は全世界共通なものの、歴史的な排出量などを考慮すると、先進国の責任がより大きいため、途上国と差異があるという考え方。

(河野円洋)

(中国、アラブ首長国連邦、世界)

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