米USTR、労働問題に対処中のメキシコ自動車部品工場の閉鎖に声明

(米国、メキシコ)

ニューヨーク発

2023年10月12日

米国通商代表部(USTR)は10月10日、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に基づいて労働問題の改善に取り組んでいたメキシコ・コアウイラ州所在の自動車用内装部品メーカー、マヌファクトゥラスVUが工場を閉鎖したことについて声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

VUはUSMCAで定められている「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM)」を通じて米国とメキシコ両政府と3月末に合意した改善策に基づいて、問題解消に取り組んでいた(2023年4月3日記事参照)。工場での結社の自由・団体交渉権の尊重や自由な労働組合活動への不介入の保証を含む改善策の履行期限は9月30日となっていたが、VUは最終的に履行完了ではなく、工場自体の閉鎖を選択したことになる。VUの本社は米国ミシガン州に所在し、メキシコでは今回閉鎖した工場が唯一の拠点だった。米国とメキシコ間でこれまでRRMが発動された案件は14件あるが、対象施設が閉鎖に至った事例は今回が初となる(添付資料参照)。閉鎖となったVU工場では今回のRRM手続きの前にも1度、RRMによって労働問題の発生が確認されていた。

キャサリン・タイUSTR代表は「米国は、VUの元従業員の権利が尊重され、未払いの賃金が支払われ、VUまたはそれを引き継ぐ企業がUSMCA違反を行わないよう、引き続き監視を続けていく」としている。タイ代表はバイデン政権の通商政策について10日に行った講演外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、RRMは労働者に変化と成功をもたらす有効な通商ツールと評価しており、USTRは今後もこれを積極的に活用していくとみられる。米国労働省のテア・リー次官は「VUが合意された改善策を履行せずに工場を閉鎖したことに落胆している」との声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出している。現時点で、VUは今回の件に関する声明などは出していない。

(磯部真一)

(米国、メキシコ)

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