インセクタ、昆虫由来メラニン・キトサンの抽出パイロット工場開設

(シンガポール)

シンガポール発

2023年12月01日

シンガポールのスタートアップ、インセクタ(Insectta)は1124日、アメリカミズアブ(black soldier fly)から、メラニンとキトサンを抽出するパイロット工場を正式開設した。同社のチュア・カイニン共同創業者兼最高マーケティング責任者は開設式典で、抽出したメラニンやキトサンを化粧品やスキンケア製品などの素材として、「日本などアジア太平洋地域に展開したい」と抱負を語った。

インセクタは、昆虫由来のバイオ材料を開発する2018年創業のスタートアップ。アメリカミズアブが蛹(さなぎ)から羽化した後の殻はこれまで廃棄されていたが、インセクタはその殻からメラニンとキトサンを抽出する技術を開発した。キトサンは、アンチエイジング効果のある化粧品やスキンケア向けの素材としてのほか、食品包装用フィルムに用いることで食品の保存期間を延ばす効果もあるという。カニ由来のキトサンと異なり、昆虫由来であれば調達から生産まで追跡ができるほか、常に同じ品質を維持し、重金属が混入されない利点があるとしている。また、昆虫由来のメラニンは100%水溶性で、既存の市販品と比べて安価で、大量生成ができるメリットがある。メラニンは大容量蓄電を可能にするスーパーキャパシタや生分解可能なセンサーの素材としての使用や、骨の再生にも効果があると期待されている。

写真 工場開設式典でテープカットする共同創業者のチュア・カイニン最高マーケティング責任者(左から2人目)とプア・ジュンウェイ最高技術責任者(右から2人目)(ジェトロ撮影)

開設式典でテープカットの様子。共同創業者のチュア・カイニン氏(左から2人目)とプア・ジュンウェイ最高技術責任者(右から2人目)(ジェトロ撮影)

インセクタは当面、日系を含む化粧品やパーソナルケアの製造会社に、キトサンの提供を目指している。同パイロット工場の生成能力は、キトサンが月当たり6キロ、メラニンが同210グラム。同社は2023年末までに最初のバイオ材料を生成する予定だ。

シンガポールでは現在、食用としての昆虫の輸入と販売を認めていないが、同国の食品庁(SFA)は今後、承認する方針を示している(2023年3月3日付地域・分析レポート参照)。シンガポール企業庁(エンタープライズシンガポール)によると、同国を拠点とするインセクタを含む昆虫系スタートアップへの投資額は、2019年から2022年までの3年間で合計約4,000万米ドルに上っている。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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